護岸ブロックの力学的安定照査について

 水理特性値集に表記されている各ブロックの揚力係数・抗力係数や相当粗度などは、「護岸ブロックの水理特性試験法マニュアル」に基づいて計測された値であり、護岸を設計するにあたって、「護岸の力学設計法」などに示されている設計法に基づいた力学的な安定性照査のために用いられるものである。
 この値を設計に使用する際には、以下の点に留意されたい。

1.水理特性値の持つ意味合いについて

 揚力係数および抗力係数は、その作用面積や突起高などのブロック形状と関連して整理されているため、単純に係数の大小のみからブロックの水理特性を比較し、各ブロックの水理的安定性を議論することはできない。
 異なるブロック間でブロックの特性を評価する場合には、本試験で得られた揚力係数・抗力係数および横揚力係数の大小が、揚力・抗力および横揚力の大小に直接反映されるものではないことに留意されたい。

2.水理特性値使用時の留意点

  本試験の対象とするブロックはコンクリートまたは石などで製作され、自重によって流水に対し抵抗するものを対象としている。
 よって、金具等によるブロック同士の連結や積み護岸のように控え厚部の噛み合わせによる抵抗力は考慮されていない。ブロックの中には、自重以外の抵抗力を特徴としているものあり、これらを評価するためには別途水理検討を加える必要がある。詳細は各ブロックメーカーに問い合わせ願いたい。

3.移動限界流速の補正について

 本水理特性値集に表記されている水理特性値は、実験水路内の固定床上に理想的に設置された状態で得られたものである。
 一方、実際の護岸では水理特性値が得られた状況とは異なり、洗掘や地盤強度の違い・施工誤差などから不陸などが生じる可能性がある。万一、不陸等が生じると揚力・抗力が増加し、不陸等が発生した地点より破壊が生じる危険性がある。
 したがって、実際の河川における群体ブロックの移動限界流速は、理想的に配置された群体ブロックの移動限界流速と単体ブロックの移動限界流速との間にあると考えられるため、護岸の設計にあたっては、測定された水理特性値より求められる移動限界流速を補正する必要がある。そこで、当面の間、設計に用いる移動限界流速を次式で補正することを推奨する。

 突起が小さく群体設置時に平滑状態となるブロックについては、群体時の揚力・抗力が小さく移動限界流速は大きな値となるが、ブロック間に不陸が生じた場合、抗力・揚力が増加し移動限界流速が低減する。
 一方、突起の大きなブロックでは、群体時の揚力・抗力は大きく移動限界流速は小さな値となるが、ブロック間に不陸が生じたには揚力・抗力の増加は少なく、移動限界流速の低減は少ない。
 低減率の設定にあたっては、このようなブロックの特性を考慮して、単体と群体の係数に1:2の重みを付けて評価することとする※。

(※「護岸・水制の計画・設計 一歩先そして一歩前」山本晃一編著、山海堂、平成15年、p.136参照)

4.作用面積について

  本水理特性値集に表記されている水理特性値は、「護岸ブロックの水理特性試験法マニュアル」に基づいて計測された値である。ここで定義されている各作用面積は下図に示すとおりであり、設計に使用する際には「護岸の力学設計法」などで定義されている作用面積との相違に留意されたい。

5.類似ブロックへのデータの転用について

 本水理特性値集に表記されている水理特性値は、各ブロックメーカーからの依頼により水理試験を実施し計測されたブロック固有の性能特性値であるので、類似ブロックへのデータの転用は好ましくない。

参考図書の紹介

○試験方法の内容について

「護岸ブロックの水理特性試験法マニュアル 第2版」 (財)土木研究センター、平成15年

○水理特性値を用いた護岸ブロックの安定性の照査法について

「護岸の力学的設計法」 (財)国土開発技術研究センター編、山海堂、平成11年

○「護岸ブロックの水理特性試験法マニュアル」による水理特性値を用いた護岸の力学的安定性の照査法や護岸の計画・設計法について

「護岸・水制の計画・設計 一歩先そして一歩前」 山本晃一編著、山海堂、平成15年

   

○護岸・根固めブロック選定について

「実務者のための護岸・根固めブロック選定の手引き(案)」 (財)土木研究センター、田代洋一著、平成22年

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