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劇場版地盤汚染遭遇物語ー土壌汚染の常識・非常識ー
 
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5.表層調査と詳細調査の矛盾の解釈

A主任

表層調査で第二種特定有害物質(重金属類)が土壌環境基準を超過したのに詳細調査では全深度で汚染は検出されませんでした。どういったことでそういうことになるのですか。また対策としてどうすればいいのですか。

C課長

まず、表層調査の調査方法から説明しましょう。

図 試料採取概念図(土壌汚染対策法) 
図 試料採取概念図(土壌汚染対策法)

土壌汚染対策法では図に示すように表層の舗装や砕石を除いた部分を0cmとして調査を始めます。地表から5cmと5cmから50cmの試料を採取して2つの試料を等量混合します。この試料を表層調査の試料 (仮に鉛の溶出量がAmg/L)として扱います。
一方、詳細調査の試料も土壌環境センター編の「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置の技術的手法の解説」のp42では表層(0cm~5cm、仮にBmg/L)の次には5~50cmの試料(仮にCmg/L)を均等に採取することになっています。
Aが0.01以下でBあるいはCのいずれかが0.01以上ということは数字の上で十分あり得る事象です。しかしAが0.01以上でB、Cが両方とも0.01未満ということは数字の上ではあり得ません。しかし、現実にはときどき起こる現象です。土中の汚染は、土粒子や土粒子間の空隙等の影響で均質にはなっていません。よってしばしばこのような現象が起こります。

B部長

わかった。では対策範囲をどのように考えたらいいの?

C課長

役所によって考えが違いますから指導を仰ぎましょう。総合的な判断になりますから、土地使用履歴や図面も用意して下さい。

バーチャル役所

(1) 分析試料が残っていれば、環境基準を超過した表層調査の試料を再度分析して下さい。この結果、環境基準以下であった場合には汚染はないということでよいでしょう。
(2) 分析試料が残っていない場合、同じ区画の別の場所で再度表層調査を実施します。同一単位区画の中央と四隅の5検体ほど1mの深度まで採取することが望ましいです。この結果、すべて環境基準以下であった場合には汚染はないということで行政も認めるでしょう。ただし、1検体でも環境基準を超過した場合には再度超過した位置の最大濃度を示した場所で詳細調査を実施することをおすすめします。

B部長

ええ!そんなたくさん分析せなあかんの?前に別の役所では、詳細調査で基準超過がなかったら、「もうええですわ」と言われましたけど。

バーチャル役所

よその役所の指導が間違いとは思いませんけど、1つのデータの間違いを証明するためには複数個のデータが必要でしょう。

B部長

おっしゃることはわかりますが、塗料が飛んだぐらいの汚染であれば、そんな神経質にならんでもいいのと違うんですか。

バーチャル役所

塗料が飛んだかも知れないと言う使用履歴がわかっていればそれなりに考慮しますよ。でも今回の場合、何もわからないわけですよね?

B部長

なんかやーな感じ。

バーチャル役所

土壌汚染対策法は、第一種特定有害物質に対処する場合、単位区画より小さい区画を設定して表層ガスを測定して絞り込んだ後、詳細調査を実施することをすすめていますが、重金属の場合はそこまでの指導はありません。汚染の有無は単位区画(10mメッシュ)で評価しようという考えです。ですから同じ単位区画内に複数の汚染データが存在する場合には、それが超過データ2検体に対し環境基準未満データが4検体あったとしても汚染土が存在する区画であるということです。

B部長

掘削除去して汚染がないことを証明したい不動産関係者が多いんですけど、掘削除去深さをどれくらいにすればよろしいか?

バーチャル役所

役所は不動産屋の片棒をかつぐわけにはいかないので別に考えて下さい。土壌汚染は、地下水汚染を引き起こしていないケースでかつ建設工事の計画のない場合には必ずしも掘削除去する必要はありません。掘削するのであればどこまで掘削すれば安全か?その議論をすすめます。
対処方法として次の方法が考えられます。
(1) 50cmとするケース
50cmまで掘削除去して適切に処理・処分します。底面で再度試料採取し、汚染がなければ処理完了となります。この際、試料の採取方法は5点混合法を原則とします。理由はばらつきを平均化して捉えることができるからです。環境基準超過があった場合には、単独で分析して、環境基準超過があった場所でさらに詳細調査を実施することをおすすめします。
(2) 1mとするケース
最初に環境基準値以下が証明されている深度は1mなので1mとします。ただし、詳細調査で1m以下もすべて環境基準値以下となっていることが条件です。この場合にはとくに底面管理をする必要はありません。

以上の方法は、法律や条例で細かく指示されているものではありません。行政指導を受けている場合にはきちんと協議して下さい。

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1.はじめに

2.調査の目的
3.防護具
4.有効数字
5.詳細調査
6.汚染土の希釈