(財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成14年
 
平成14年7月 報文抄録

【論 説】これからのリスクマネージメントのあリ方

高橋正宏

【報 文】 遺伝子組み換え酵母法による下水中のエストロゲン様活性の測定―3種類の組み換え酵母法の比較―

宮本宣博・斎藤正義・玉本博之・田中宏明

<抄録> エストログン様物質の包括的な測定方法として、3種類の組み換え酵母法を用いて各測定法の特性把握と、下水試料への適用を検討した。その結果、測定法の違いによってエストログン様活性の結果に相違が見られた。またSumpter株は他株に比べ、下水中に合まれる毒性物質の影響を受けにくく、下水試料の評価に適していることが確認された。

<キーワード> 環境ホルモン、エストロゲン様活性、遺伝子組み換え酵母、バイオアッセイ、下水

【報 文】 下水処理水が魚類の雌性化に及ぼす影響

東谷 忠・玉本博之・田中宏明

<抄録> 下水処理本に雄コイを曝露し,エストログン作用の影響指標である血中ビテロジェニンを測定した。その結果,早春期の調査では雄コイのビテロジェニンは経時的に上昇したが,その他の季節ではその結果を再現することはできなかった。処理水のエストログン作用のほかに, ビテロジェニン生成に関わる形響要因があると考えられた。

<キーワード> 下水処理水,エストロゲン作用, コイ、 ビテロジェニン

【報 文】 多摩川における水生生物への環境ホルモンの移行

高橋明宏・玉本博之・東谷 忠・田中宏明

<抄録> 環境ホルモンが魚類に移行する経路を把握するため、魚が生息している環境である水、および底生生物や付着藻類といった食物(水生生物)を対象として、環境ホルモン(ノニンフェノール、ビスフェノールA、17β―エストラジオール)の蓄積量を比較した。その結果、付着藻類、底生生物ともに河川水の濃度よりもかなり高く、これらの環境ホルモンが水生生物に多く蓄積していることが分かった。また、底生生物は藻類よりも低い蓄積量であったことから、NP、BPAおよびE2は底生生物の体内で代謝分解されていることが示唆された。今回の調査結果より魚類は藻類や底生生物を餌とする蓄積経路は、水からの直接的な経路同様にNP、BPA及びE2が移行する重要な経路であると考えられた。

<キーワード> 内分泌攪乱化学物質、環境ホルモン、生物濃縮、エストロゲン、多摩川

【報 文】 底質中のダイオキシン類の抽出手法

南山瑞彦・落 修―・鈴木 穣

<抄録> 近年、極微量でも高い毒性を持つとされているダイオキシン類による汚染が全国的に大きな問題となっており、建設事業に対応した、簡易で迅速に結果が得られる底質中のダイオキシン類の分析手法の検討、開発が求められている。本検討では、乾燥・抽出工程の迅速化に関する比較検討を行った。その結果、高速溶媒抽出法(PFE法)での抽出条件の検討により、一般に数日を要する乾燥・抽出工程を40分程度に短縮することが可能であることが明らかとなった。

<キーワード> ダイオキシン類、底質、分析方法、乾燥、抽出、迅速化

【報 文】リアルタイムPCR法によるクリプトスポリジウムオーシストの定量検出法の開発

北村友一・鈴木 穣

<抄録> 本稿は、 リアルタイムPCR法によるクリプトスポリジウムオーシストの定量検出を検討したものである。リアルタイムPCR法によるクリプトスポリジウムの検出では、ハイブリダイゼーションプローブ法を用いることにより特異性の高い検出が可能となるもとがわかった。その精度は、オーシスト数20個以上からの検出可能であり、100個以上で定量可能となることがわかった。またmRNAを標的とすることにより生きているオーシストの検出も可能ととなることがわかった。

<キーワード> クリプトスポリジウム、リアルタイムPCR、DNA、生死判定、mRNA

【報 文】 強度の空間的なばらつきを考慮したフィルダム基礎地盤の掘削管理

山口嘉―・佐藤弘行

<抄録> 本報では、フィルダム基礎掘削の合理化を目的に、アースダムの基礎となる粘性土層に対して実施された強度試験結果を用いて、その空間分布に着目した掘削基準の検討を行った。まず初めに相対的な弱層の抽出を行い、試験対象領域全体および抽出した相対的弱層内において強度の統計処理を行い、合理的な基礎掘削管理基準についての提案を行った。

<キーワード> フィルダム、基礎掘削、強度、ばらつき

【報 文】 ダム放流音に関する現地観測―天ヶ瀬ダム(アーチ式ダム)の放流音特性―

小野雅人・柏井条介

<抄録> 現地観測結果を用いて、天ヶ瀬ダムコンジットの放流音の推定を行い、本平水叩き式減勢工の放流音特性との比較を行った。その結果、天ヶ瀬ダムでは、音のエネルギーヘの変換率は水平水叩き式減勢工の場合よりも大きいこと、音源のパワースペクトル比は概ね流況に依らない固有の分布形状をもつことが分かった。

<キーワード> 空中放流、現地観測、低周波音、点音源、変換率

【報 文】 下水処理水が水生生物に与える影響の評価

宮本宣博・玉本博之・田中宏明

<抄録> 生態系に配慮した下水処理水の水質を検討するため、下水処理水の放流に伴う水生生物群集と水質の関係について検討を行なった。調査の結果、消毒工程の変更によって生物群集が大きく変化することが確認された。また放流先河川での生物群集の変化、アンモニアと生物の出現分布について検討した。

<キーワード> 下水処理水、水生生物、底生生物、付着藻類、生物多様性、水質