(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成24年

平成24年6月 報文抄録
 

【特集報文】 津波防災地域づくりの概要とそれを支える主要な技術

五十嵐崇博・諏訪義雄

<抄録> 「津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)」に基づく津波防災地域づくり制度の内容とそれを支える重要な技術である津波浸水想定の設定方法、建築物等によるせきあげ高の評価法の要点について紹介する。

<キーワード> 津波防災地域づくり、津波浸水想定、基準水位、推進計画、警戒避難体制、建築行為・開発行為規制

 

【特集報文】 津波による海岸堤防の被災の分析〜粘り強くする方向性を見いだすための被災分析〜

渡邊国広・ 諏訪義雄・加藤史訓・藤田光一

<抄録> 青森県から千葉県の太平洋沿岸に設置された海岸保全施設を対象に、東北地方太平洋沖地震津波による被災状況を分析した。その結果、三面張り構造の海岸堤防では裏法尻部の被覆、天端と背後地の比高の縮小が粘り強さの向上に寄与すること、表法の緩勾配化は半壊しても全壊に至りにくくする効果があることが示された。

<キーワード> 津波、海岸保全施設、海岸堤防、被災、粘り強い

 

【特集報文】 津波来襲時の河川堤防の被災の程度を分けた要因

福島雅紀・佐野岳生・成田秋義・服部 敦

<抄録> 東北地方太平洋沖地震津波の来襲直後に実施した現地踏査結果等から、津波痕跡と堤防高、被災状況との関係を整理した。今次津波を再現した津波遡上シミュレーション結果等を用いて、津波遡上時の越流状況を詳細に調べたところ、堤内地の湛水状況によって同程度の越流状況でも被災の程度が異なることを確認した。

<キーワード> 河川津波、越流、堤防、侵食、ウォータークッション

 

【特集報文】 下水道の耐津波対策における技術基準策定に向けた最新動向

深谷 渉・ 松橋 学・田敏宏

<抄録> 東日本大震災に伴う津波は、東北地方沿岸部の下水処理場やポンプ場に壊滅的打撃を与えた。国土交通省では、学識経験者等からなる下水道地震・津波対策技術検討委員会を設置し、津波に対する今後の下水道施設のあり方を議論してきた。本稿は、第4次提言「耐津波対策を考慮した下水道施設設計の考え方」の内容を中心に、下水道における耐津波対策の最新動向について述べる。

<キーワード> 下水道施設、耐津波対策、耐津波性能、リスクマネジメント

 

【特集報文】 津波避難ビル等の構造設計法に関する技術基準

深井敦夫・原口 統

<抄録> 東日本大震災における津波による建築物被害を踏まえ、津波避難ビルの構造設計法にについて、津波荷重算定式等の見直しを行い、津波防災地域づくり法に基づく技術基準告示等に反映するとともに、実務者の技術的支援のため、設計例を作成した。

<キーワード> 津波避難ビル、構造設計法、技術基準、津波荷重、設計例

 

【特集報文】 東北地方太平洋沖地震を踏まえた津波警報の改善

尾崎友亮

<抄録> 東北地方太平洋沖地震に対し気象庁は地震発生3分後に津波警報を発表したが、実際の津波は第1報の予測を大きく上回るものであった。同地震への津波警報発表における諸課題を踏まえ、平成23年度、気象庁では津波警報の改善策をとりまとめた。平成24年中を目途に、改善策に沿った運用へ移行する計画である。

<キーワード> 東北地方太平洋沖地震、津波警報、津波警報改善策、情報文等の改善

 

【現地レポート】 岩手県における東日本大震災津波からの復旧・復興の取組

馬場 聡

<抄録> 本報告は、岩手県における東日本大震災津波による海岸保全施設等の被災状況、効果の検証結果を紹介するとともに、三陸地域の復旧・復興に向けた今後の津波対策の方向性、海岸堤防等の復旧・整備の取組状況を報告するものである。

<キーワード> 東日本大震災津波、復旧・復興、海岸堤防、防災

 

【現地レポート】 仙台湾南部海岸における復旧・復興に向けた技術活用最前線
〜津波堆積土砂の活用を中心として〜

佐藤慶亀・横山喜代太

<抄録> 東日本大震災・津波で被災した仙台湾南部海岸の復旧にあたり、東北地方整備局が新たに取り組んだ体制を紹介した。また大量に発生した津波堆積土砂及び震災瓦礫の活用の方向性について中間報告する。

<キーワード> 東日本大震災、津波堆積土砂、震災瓦礫、石炭灰造粒物、台形CSG

 

【報文】 ハイドロフォンによる掃流砂量の連続観測

鈴木拓郎・内田太郎・岡本 敦

<抄録> ハイドロフォンを用いた掃流砂観測手法の現地適用性を検証するため、与田切川坊主平堰堤にて流砂観測施設による直接観測とハイドロフォン観測を実施した。両者の結果は細かな変化まで非常に良好に一致しており、ハイドロフォンの現地適用性の高さが示された。

<キーワード> 流砂観測、掃流砂、ハイドロフォン、音圧、与田切川

 

【報文】 自然風・交通換気力を活用した新換気制御技術の開発

森本 智・石村利明・角湯克典・三谷敦史

<抄録> 道路トンネルの換気設備は、トンネル延長、交通量、換気対象物質である自動車排出ガス量等の諸条件に加えて、自然風と自動車の走行による交通換気力を考慮して設計が行われている。しかし、供用後の換気設備の運用は、時々刻々と変化する自然風や交通換気力とは関係なく、所要のトンネル内環境が確保されるように一定パターンに従った制御をしている場合が多い。このため、換気設備の運用に自然風と交通換気力を活用した制御を行うことで、換気設備のランニングコストを大幅に削減できる可能性がある。本稿では、時々刻々と変化する自然風と交通換気力を活用する新換気制御方式について、実証試験を実施し適用性について検証を行ったので報告する。

<キーワード> 道路トンネル、換気制御技術、自然風、交通換気力

 

【土研センター】 樹脂製雨水貯留浸透槽の実走行試験

山田浩久・坪井宏人・中根 淳・倉持智明

<抄録> ゲリラ豪雨や台風などによる道路の冠水対策や雨水の有効利用として、道路地下に適用可能な樹脂製雨水貯留浸透槽の構造部材『アクアロード』の開発にあたって、実構造物による走行試験を実施した。その結果、『アクアロード』は道路構造物として必要な性能を有する構造部材であることを確認できた。

<キーワード> 道路、雨水、ゲリラ豪雨、貯留浸透槽、走行試験