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骨材飛散抵抗性試験に関する調査検討

1. はじめに

 ポーラスアスファルト混合物を用いた舗装、特に交差点部等で問題となる骨材飛散抵抗性に関する試験機は、各メーカーが独自の機構を取り入れて製作しているため、異なる機構の試験機で評価を行っている現状にある。

 また同一機構の試験機であっても、試験方法、試験条件、試験結果の取り扱いが標準化されていないため、試験結果によって施工現場の破損状態が推測できない点が課題となっている。

 本WGでは以下に示す3項目の検討を目的に活動した。

  1. 骨材飛散抵抗性を評価する標準的な試験方法・試験条件の提案
  2. 機構の異なる骨材飛散抵抗性試験機から得られる試験値の関係把握
  3. 現場における骨材飛散状況と骨材飛散抵抗性試験値の関係把握
 

2. WG参加会社が保有する試験機構のアンケート調査(H13)

1) 試験機のタイプ

 各社が保有する骨材飛散抵抗性試験機を調査したところ、試験機のタイプは@供試体一方向回転タイプ、A供試体両方向回転タイプ、B供試体スライドタイプの3種類に分類された。

写真−1 供試体一方向回転タイプ(ソリッドタイヤ)

写真−2 供試体両方向回転タイプ

写真−3 供試体スライドタイプ

2) 評価方法

 評価方法としては、@試験時間内での沈下量、A一定沈下量に達する時間、B飛散面積、C剥離深さ、D骨材飛散損失量、などがあった。

3. 各試験機構で実施した同一混合物の試験結果検証および関係把握(H13)

 同一配合の混合物により各社の骨材飛散抵抗性試験を行った結果、以下の事が分かった。

(第1回共通試験)
  1. 骨材飛散抵抗性は空隙率が大きくなると低下する
  2. 骨材飛散抵抗性は試験温度が高くなると低下する
  3. 骨材飛散抵抗性はタイヤの接地時間が長くなると低下する
  4. 骨材飛散抵抗性は曲率半径が小さくなる(曲線の曲がり度が急)と低下する
  5. 骨材飛散抵抗性は試験輪にスリップ状態が加わると低下する
  6. 骨材飛散抵抗性は使用する試験輪によって異なり、トレッドを有したタイヤを使用すると低下する
  7. 同一機構、同メーカーの試験機であっても、試験結果が異なる

4. 試験機関で生じた誤差を解明するための共通試験(第2回共通試験)(H14)

 試験期間の誤差の原因として以下のことが考えられたため、これらの影響について共通試験を行い、検討を行った。

  1. 供試体作製方法の違いによる試験地への影響
  2. 試験中の飛散骨材除去の有無による試験値への影響
  3. データの取り込み数による試験値への影響
  4. 評価方法の検討

 共通試験を行ったところ、以下のような結果となった。

  • 試験時間に対する試験値の誤差は比較的大きい
  • 供試体作製方法の違いによる試験値への影響は、上記の誤差を考慮すると無視できるものといえる
  • 供試体一方向回転タイプ(ソリッドタイヤ使用)において、試験中に飛散骨材を除去する行為は、試験値へのばらつきを大きくするため行わない方がよいと考える。
  • 供試体一方向回転タイプ(ソリッドタイヤ使用)において、沈下量を求める際の一回転当たりのデータ取り込み数の違いによる試験値への影響は少ないと考えられる。
  • 供試体一方向回転タイプ(ソリッドタイヤ使用)における評価方法として、沈下量による方法、変曲点による方法、飛散骨材量による方法および、骨材飛散が観測され始めた時間による方法を検討した結果、試験の簡便性、整合性を考慮すると沈下量による方法あるいは変曲点による方法が良いと考えられる。
  • これまで用いてこられた沈下量は圧密を若干含むとしても骨材飛散量を評価していることが確認された。

5. 室内試験結果と現場における骨材飛散状況との関係調査(H14)

 評価値の扱い、許容されるばらつき程度、機構の異なる骨材飛散抵抗性試験機から得られる試験値の関係把握等の検討のために、交差点を含んだ排水性舗装の現場において、室内試験結果と現場における骨材飛散状況との関係を調査した。

 写真−4は3段階に分類した骨材飛散のレベルの例である。(レベル1:表面骨材の部分的な飛散、レベル2:表面骨材の連続した飛散、レベル3:骨材2層以上の飛散)

写真−4 骨材飛散レベル

6. 機構の異なる試験装置間の関係把握(H15)

 配合や締固め度等を変えた10種類の供試体について、第3回共通試験を行った。
 その結果、各試験機間の関係はいずれも高いものではなく、中には試験値間の関係が矛盾している場合も生じていた。この原因として、供試体に加えている荷重が異なっていることや、使用するタイヤの種類、載荷荷重や試験速度などが異なっているためと考えられた。

7. 室内評価値と現場状況との関係把握(H15)

 平成14年度に引き続き、現場状況と室内評価値との比較を行った。
 その結果、骨材飛散を評価する試験機と現場で生じている骨材飛散に明確な関係は見られなかった。その原因としては、骨材飛散が発生する場所においては様々な荷重が絡んでいること、施工的な原因を有していること、また交差点においては回転半径、走行速度等が異なっていることが考えられた。

8. 各試験機構の試験条件見直し等に関する検討(H16)

 平成16年度は、現場の再調査および新規の現場調査を行うとともに、樹脂トップコートを施した供試体が良好な結果となる試験条件の模索等を行った。
 検討結果は以下の通りである。
  1. バインダ種別に関わらず試験温度が60℃付近になると混合物は流動傾向を示す。このため混合物表面に負荷されるトルクによって発生すると考えられる骨材飛散が適切に評価されていない。
  2. 一方向回転タイプでソリッドタイヤを使用した場合、混合物表面には接地圧の関係で必要以上のトルクが負荷されている。しかし、トレッドを有する空気タイヤを使用することや、試験温度を低く設定することで樹脂によるトップコートの効果を確認できる。
  3. 一方向回転タイプ(ソリッドタイヤ)の試験機において、供試体回転数を変化させた場合では、速度を早くすることで樹脂によるトップコートの効果が確認できる。この結果も載荷時間を短くすることで流動の影響が緩和されることが原因と考えられる。

9. 樹脂トップコート工法を的確に評価できる試験条件の検討(H17)

 室内試験において混合物の流動の影響を受けない試験温度やタイヤ種を設定することで、現場の評価に近い結果が得られ、トレッドを有する空気タイヤを使用することや、試験温度を低く設定する、供試体回転数を早くするなど、塑性流動の影響を緩和する条件を設定することでトップコートの効果を確認できることが分かった。

10. 再現性の確認とソリッドタイヤの活用可能性の検証(H17)

 ソリッドタイヤは、骨材付着防止のためグリス塗布の有無(表面処理)や微細な亀裂等によって差が生じやすいことが分かり、試験条件を見直す必要があることが分かった。

11. ハンドカート(エアータイヤ)の検討(H17)

 タイヤの種類はハンドカート(エアータイヤ)、試験温度は50℃、載荷荷重は490Nにすることによって、混合物間の差が明確になることが分かった。
 しかし、性能評価という観点から指標値を定めるためには、更なるデータの蓄積が必要であると考えられた。

写真−5 ハンドカートタイヤ(エアータイヤ)

12. 「ねじり骨材飛散抵抗性試験方法」の提案(H18)

 本WGの研究当初では、骨材飛散を評価する試験機として異なった状況を再現した4つのタイプの試験機について検討したが、各試験機間で互換性のある試験条件を統一することにより、ポーラスアスファルト混合物を使用した交差点等で、タイヤのねじりによって生じる舗装表面から骨材が飛散する程度を評価することができる試験方法として3つのタイプ(タイヤ旋回タイプA、タイヤ旋回タイプB、供試体スライドタイプ)の試験方法を提案することができた。

 なお、当初検討を行った「両方向回転タイプ」は、すえぎりを評価できる試験機としては有効と考えられる。今後駐車場等でのすえぎりを評価する際は、この装置の利用を推奨する。