講習会「Q & A」コーナー
   
 「質 問 と 回 答」
講習会でのご質問ありがとうございました。  
 2007.11.27 「橋梁の免震設計に関する講習会」
      
 質 問1    分散構造として免震沓を採用した場合に免震効果をみないで設計を行うと言われていましたが、実際には免震効果のある挙動をすることにはならならないでしょうか?モデル化で分散としていても、実際の挙動は免震となる、この両者の違いはどのように説明できるでのでしょうか?
 回 答:    設計はゴム支承を用いた地震時水平力分散構造として行うが支承だけ通常のゴム支承の代わりに免震支承を用いるような場合ですが、道路橋示方書によりますと、このような場合には、固有周期を長周期化するとともに、エネルギー吸収を図るといった免震支承としての性能が照査されないので、免震支承の減衰効果を見込まないようにすることとされています。
 ご質問のように、設計は分散構造であっても、用いるのが免震支承であれば、実際には免震支承の特性としての挙動となるのではないかという点ですが、これはその通りと考えられます。しかしながら、免震設計をしない場合には、免震設計で想定しているように橋脚を副次的な塑性化に抑え、主として免震支承においてエネルギー吸収を図るということが担保されないことになります。条件によっては、免震支承はついているものの主たるエネルギー吸収は橋脚の塑性化によることになってしまい、免震支承ではエネルギー吸収を効果的に図ることができなくなってしまうような設計になることも考えられます。
 一般には、エネルギー吸収性能を有する免震支承の方が、一般的なゴム支承よりも減衰性能が高く、その分耐震上は有利になりますので、免震設計をしないのであれば、免震支承の減衰効果を見込んでほならないと解釈されると考えられます。
 このため、一般には、免震支承を用いるのであれば、免震設計を行うのがよいと考えられます。
     
 質 問2    現況の免震橋コストダウンの可能性についてはどのように考えていますか?損傷半分はもったいない気がします。

 回 答:    ご質問の「損傷半分」につきましては、橋脚の許容塑性率の安全率が2倍にされていることをご指摘されていると推測いたします。もともと免震橋では、橋脚ではなく免震支承で主たるエネルギー吸収を図る構造とされていますので、このような免震機構を確保するために、橋脚についてはその塑性化の程度に制限が設けられています。橋脚に塑性化をさらに許容しますと、免震支承はついているものの主たるエネルギー吸収は橋脚の塑性化によることになってしまい、免震支承ではエネルギー吸収を効果的に図ることができない可能性もあるところです。このように、橋脚の塑性化の制限は、地震力に対して抵抗するだけではなく、免震機構を確保するための条件と考えることができます。
 コストダウンの可能性ですが、一概には言えないところと考えられます。他の橋の構造と相違する大きな点の1つは免震支承そのものであり、この免震支承のコストダウンを図ることも1つの研究テーマと考えられます。設計のために様々な構造細目や条件が設けられていますので、例えば、耐震設計を満足させるために支承が大きくなってしまい、常時の面圧に大きな余裕を持っている場合などもあり得ます。このような点についての合理化を進めていくことが重要と考えられ、本研究委員会でもこうしたコストダウンの可能性についての提案を行うことも目標としているところです。
   
 2007.05.02 「地震に強い道路橋設計講習会」
 
質問1 動的解析例について
  動的解析事例の中で、
  ・ 橋脚基部は非線形回転バネでモデル化
  ・ DYMOでは非線形はり要素(曲げモーメント〜曲率を採用)
  同等と考えて良いという考え方について、もう少し説明をお願いします。
 回 答:  図−1は、非線形回転バネモデルと非線形はり要素のモデル化のイメージを示したものです。
 非線形回転バネでモデル化する場合は、塑性ヒンジ区間Lpにおいて高さ方向の曲率は一定になるものと仮定します。ここで、塑性ヒンジ長Lpは、通常、地震時保有水平耐力法で用いられる方法と同様の長さが用いられます。このようにすると、塑性ヒンジ区間が塑性化した状態での非線形回転バネの回転角θと曲率φとの関係は、(1)式のようになります。

 θ=φ・Lp=(φp+φy)Lp               (1)

 ここで、φyは降伏曲率、φpは塑性曲率です。 

 一方、非線形はり要素でモデル化する場合は、区分したはり要素毎に作用曲げモ−メントと曲率が求められます。この場合には、塑性ヒンジ区間という一定の長さの仮定は設けていませんので、力の釣合いに基づいて、要素毎にそれぞれ塑性化する範囲が求められることになり、一般にLpとは完全には一致しなくなります。
  したがって、非線形回転バネモデルと非線形はり要素モデルの基本的な相違は、塑性ヒンジ区間を設定して、その区間内で一定の曲率となるように仮定するかどうかという点と考えることができます。一般的な橋脚モデルのような場合には、基部で曲げモーメントが大きくなる三角形の曲げモーメント分布となりますので、両モデルは同等の結果を与えるようになります。
 なお、断面特性や作用曲げモ−メントによっては、両モデルにより求められる塑性ヒンジ長が異なってくることがありますので、この場合には、両モデルは同等ではなくなってくる場合も生じ得ることに注意してください。
 通常、一般的な橋脚の場合には、塑性ヒンジ区間が明確であるため、非線形回転バネモデルを、塑性ヒンジ区間を確定することが困難な場合には非線形はり要素モデルを用いることが多いと思われます。

   
 
(a)回転バネモデル
 
(a)回転バネモデル
 
(b)はり要素モデル
 
(b)はり要素モデル
 
図−1 非線形回転バネモデルと非線形はり要素モデル
 
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質問2 落橋防止構造について
 質問2-1:  落橋防止構造の講演で、“1.5×橋台死荷重反力”の表示位置が配布資料とスライドで異なりますが、どちらが正しいですか?
 回 答:  配布資料が正です。スライドに示したラインは、“1.5×橋台死荷重反力”の位置をずらした際に、一緒にずれてしまったものです。
 
スライドの正誤図
 
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 質問2-2:  落橋防止構造設計ガイドライン(案)を具体的に実務において参考にする際に注意すべき点は何でしょうか。
 回 答:  講演や落橋防止構造設計ガイドライン(案)の中で述べているように、落橋防止構造設計ガイドライン(案)は、まだ研究委員会の報告書の段階ですから、設計地震力を含めて、これを直接、耐震設計に使うことはできません。しかし、落橋防止構造設計ガイドライン(案)に示されている“橋梁の落橋崩壊形を想定した落橋防止構造の設計”や“落橋防止構造のモデル化”など、耐震設計の考え方は設計の参考にして頂けると思います。橋梁がどのような落橋損傷モードで落橋するかを想定することは、大変重要だと考えられます。
   
 質問2-3:  ジョイントプロテクタータイプの落橋防止構造はないでしょうか?
 回 答:  御質問の意味は、ジョイントプロテクターと兼用できる落橋防止構造はないかということでしょうか?ジョイントプロテクターは、レベル1地震動に対して伸縮装置を保護するために設置するものですから、落橋防止構造にその機能を持たせるということは、レベル1地震動で落橋防止構造を機能させ上部構造と下部構造間の相対変位を拘束することになり、上部構造や下部構造に大きな地震力が作用することになります。
 それとも御質問の意味は、道路橋示方書X耐震設計編の“図-解14.4.1ジョイントプロテクターの構造例”のような構造の落橋防止構造はあるかということでしょうか?落橋防止構造設計ガイドライン(案)の“3.1落橋防止構造の特徴とその限界状態”に示した、引張と圧縮に抵抗できる落橋防止構造がそれに近い構造になっています。

   
 質問2-4:  R<φ(R:曲げ径,φ:ケーブル径)の条件で実施されたPCケーブルの曲げ引張試験は、曲げたというよりケーブルを傷付けて実験を行っていることにならないでしょうか?
 回 答:  講演会でも述べましたがPCケーブルタイプの落橋防止構造が、上部構造が逸脱した状態で機能した場合には、下図に示すように、鋭角部に押しつけられながら両方向から引張力が作用すると予想されます。そのとき、PCケーブルには傷が付いたりして、本来の耐力よりも小さな荷重で破断することが予想されます。そのような状態を想定した性能実験ですから、ご指摘のようにケーブルに傷が生じることを考慮した実験を行っています。
 
ケーブルに傷が生じる
 
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