(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成24年

平成24年4月 報文抄録
 

【特集報文】 濁水が魚に与える影響 〜高濃度の濁りの場合〜

村岡敬子・天野邦彦・三輪準二

<抄録> 河川で発生する濁りによる影響を的確に評価することを可能ならしめるため、わが国の重要な水産対象魚種のひとつであるアユを対象に、個体の鰓に付着した懸濁物質の質量と粒度組成の違いに着目し、懸濁物質の違いによる影響の原因を明らかとした。また、魚種の違いによる影響レベルの違いの原因について考察した。

<キーワード> 濁り、懸濁物質濃度、鰓、生存率、致死

 

【特集報文】 貯水池濁水処理における天然凝集剤の凝集特性

海野 仁・箱石憲昭

<抄録> 本報告は、凝集材として天然由来の土コロイドであるアロフェンを取り上げ、凝集特性を明らかにしたものである。貯水池から濁水を採取し凝集実験を実施した結果、アロフェンは濁水の凝集に有効と判断された。また、濁水に凝集材を投入した後、超音波分散処理と攪拌処理を同時に行う方法により、濁水を効果的に凝集できることが判明した。

<キーワード> 天然凝集材料、アロフェン、貯水池、濁水、凝集

 

【特集報文】 活性汚泥処理による抗生物質クラリスロマイシンの代謝物探索

森田匡一・小森行也・南山瑞彦

<抄録> 本研究では、活性汚泥に抗生物質クラリスロマイシン(CAM)を添加し、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS/MS)法によりCAM代謝物の探索を行った。その結果、代謝物候補の分子イオンとしてm/z828(ポジティブイオン)とm/z826 (ネガティブイオン)が検出された。これらのイオンは同一物であると考えられ、CAMに硫酸抱合が生じていると推測された。

<キーワード> 活性汚泥処理、抗生物質、クラリスロマイシン(CAM)、代謝物、質量分析(MS)

 

【特集報文】 各種下水処理条件でのノロウイルスの除去特性

諏訪 守・岡本誠一郎・桜井健介・内田 勉

<抄録> 各種下水処理法として標準的な活性汚泥処理法を含め、窒素やりんの高度除去法である生物学的高度処理法などによるNVの除去率に及ぼす影響因子を評価した。また、下水処理場における負荷削減量を明確にするため、冬季の感染性胃腸炎の流行期において日間変動の調査により流入と流出濃度を評価した。その結果、標準法やOD法ではHRTやML(V)SS濃度にNV除去率が依存すると考えられたが、高度処理法ではその影響が見られなかった。下水処理場における流入、流出のNV濃度の平均は最大検出濃度に対して各々50%程度であることが明らかとなった。流入、流出濃度の変動状況は、処理場の規模や地域差により大きな偏りはないようであった。日間変動による24時間採水と施設滞留時間を考慮したスポット採水により各々得られたNV平均除去率は、ほぼ一致した値であった。

<キーワード> ノロウイルス、活性汚泥処理法、高度処理法、日間変動

 

【特集報文】 水循環への膜処理技術の応用

小越眞佐司・宮本綾子・西村峻介

<抄録> 21世紀は「水の世紀」といわれており、効率的な水資源利用が求められている。その中で、排水を循環利用する技術が注目されており、膜処理技術はその中心的な役割を果たしている。そこで、本稿は、水の循環に伴う諸課題や膜処理技術の現状と課題を整理し、膜を利用した近未来の水循環システム実現に向けた技術の方向性について述べた。

<キーワード> エネルギー、再生水、膜処理技術、膜分離活性汚泥法、水循環

 

【特集報文】 千曲川上流域における流域特性と河川水質の関係性評価

天野邦彦

<抄録> 千曲川上流域における河川水質の縦断的変化を、集水域特性の縦断的変化と関連づけて評価することを試みた。地理情報システム(GIS)を用いて、河川を縦断的に分割して、それぞれの分割地点における集水域の土地利用変化を集計し、水質変化との関係性を評価した。森林が大半を占める当該流域において、硝酸性窒素濃度が急激に上昇する地点が存在するが、これは、集水域における野菜畑の割合が多い地点であり、施肥に由来する硝酸性窒素が流出していると考えられることが示された。このような解析を行うことで、河川水質変化に与える流域の影響度合いを評価することが可能となると考えられ、水質保全のための流域対策策定に資するものと考えられる。

<キーワード> 流域、土地利用、水質、河川、GIS

 

【現地レポート】 印旛沼・流域における水循環健全化の取り組み

山口 浩・竹内亀代司・日野泰宏・椿原保彦・堀口友宏・杣澤良介・矢野秀和

<抄録> 印旛沼は千葉県最大の湖沼で、貴重な水源であるが、流域の急激な都市化により水質が著しく悪化した。千葉県では、印旛沼流域水循環健全化会議を立ち上げ、行政、研究機関、市民、利水者等が一体となり、多様な流域対策を進めている。また、沼内には、水質改善効果が期待される水生植物が繁茂する植生帯を造成している。

<キーワード> 流域水循環健全化、エコトーン、みためし、沈水植物

 

【報文】 沿道大気質予測に用いるNOx・PM等自動車排出係数の更新

土肥 学・曽根真理・瀧本真理

<抄録> 道路事業の環境影響評価における沿道大気質予測に用いるNOx・PM等自動車排出係数について、最新の自動車排出ガス量測定データや今後の排ガス規制強化動向を踏まえて更新を行った。本報文では、このNOx・PM等自動車排出係数の更新値の算定過程及び算定結果の概要について報告する。

<キーワード> 沿道大気質予測、自動車排出係数、NOx、PM

 

【報文】 自動車走行時のCO2排出係数及び燃料消費率の更新

土肥 学・曽根真理・瀧本真理

<抄録> 沿道大気質予測に用いるNOx・PM等自動車排出係数の更新のために調査した最新の自動車排出ガス量測定データや燃費基準導入・強化動向を用いて、自動車走行時のCO2排出係数及び燃料消費率の更新を行った。本報文では、このCO2排出係数及び燃料消費率の更新値の算定過程及び算定結果の概要について報告する。

<キーワード> 自動車排出係数、CO2、燃料消費率

 

【土研センター】 道路規制箇所等に用いられる仮設棚類の種類と性能

安藤和彦

<抄録> 道路の工事箇所や規制箇所等と、車両や歩行者・自転車等が通行する車線、歩道等との境界に設置されている代表的な仮設柵類を取り上げ、それら施設の性能や特徴等を整理するとともに、選定、設置上の留意点についてとりまとめを行った。

道路規制箇所等に用いられる仮設柵類の種類と性能

<キーワード> 仮設柵、道路施設、道路規制、性能