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舗装の出来形、品質および調査に関する非破壊技術について

1. はじめに

 日本において、舗装の出来形(厚み)・品質(密度)を評価する場合,対象となる舗装体からコアを採取して厚さを測定し、密度を算出する方法が一般的である。しかし近年では、舗装体に対する非破壊試験として、舗設したアスファルト混合物の密度を測定する試験機も使用されつつある。ただし、そのような試験機による方法は、施工中の転圧不足箇所をリアルタイムに見つけ出すことを主目的としており、コアによる密度測定に替わるような状況にはなっていない。そこで本勉強会では、舗装体の出来形・品質管理を中心とした非破壊技術について、海外の情報も含めた試験方法や測定技術を調査し、その結果を紹介するものであり、我が国における非破壊技術の適用可能性についての討議も含め検討を行った。

2. 検討概要

(1)米国における最新の非破壊調査技術

 2008年にNCHRP (National Cooperative Highway Research Program)により報告されたレポートには、欧米諸国における近年の非破壊技術による加熱アスファルト混合物の施工全般に関する品質管理/保証のための非破壊技術について、推奨マニュアルや各試験のガイドラインが取りまとめられている。
 レポートでは、対象として『加熱アスファルト舗装』と『砕石路盤・路床層』に分かれており、様々な非破壊調査手法のマニュアルが整理されている。その中には、日本でも利用実績の多い電磁波密度測定器やFWD (Falling Weight Deflectometer)に関する説明がなされていた。

(2)非破壊によるアスファルト舗装の密度測定原理について

 密度測定装置には、大別して放射線による方法と電磁波による方法がある。ただし、いずれの方法もキャリブレーションが必要であり、日本における使用は採取コアによる品質管理の代わりとなるものではなく、施工中にリアルタイムで転圧不足箇所を認識するといった用途である。

(3)地中レーダを用いたアスファルト舗装の厚さ測定について

 電磁波を用いた地中レーダは、車載型や手押し式など様々な形態があるが、定義として、地中に電磁波を放射し誘電率の異なるものの反射波をとらえることで、地中構造を探査する装置として、様々な用途で用いられている。以前の使用用途としては、埋設物や鉄筋位置の探査や空洞探査等に用いられていたが、近年取り組まれている例として、舗装厚さの推定や密度の測定の検証もなされている。本装置についても、測定厚さの精度を向上させるためにはキャリブレーションが必須である。

(4)米国におけるアスファルト舗装密度計の現状

 米国におけるアスファルト舗装の密度を測定するための密度計に関して、放射線と非放射線に大別し、現状を報告した。一般的に人体に悪影響を及ぼすとされる放射線を用いる密度測定装置の代替品として、非放射線密度計に関する検討が数多く実施されており、その成果により近年では非放射線密度計が全米に普及しつつある。その成果の中には、密度測定結果の相関性のみならず、コスト面でも非放射線密度計は優位にあるとの報告もあった。

(5)土木研究所における舗装の非破壊調査技術の開発

 土木研究所で開発・検証中の非破壊技術に関して報告がなされた。『高周波表面波探査技術』は、舗装表面を打撃した際に発生する高周波の表面波を非接触で測定し、その表面波の周波数-位相速度分散特性から、舗装の構造と物性等を推定する装置である。『3次元GPR』は、第三章で説明した一般的な地中レーダと位置情報測位技術を組み合わせることで、三次元で視覚的に舗装構造を把握することが可能な装置である。『移動式たわみ測定装置(MWD)』は、FWDによる方法と異なり、車両の自重により発生しるたわみを移動しながら測定することで、局所的な不健全箇所を効率的に検出するとこが可能な装置である。たわみ測定には、レーザ変位計およびドップラー振動計が検討されており、試験走路の測定の結果、いずれの方法でもFWDによる不健全箇所と概ね一致することが明らかとなっている。 

3. まとめ

 昨今の日本の建設事業を取りまく課題として、熟練技術者の不足や新規入職者の減少、また生産性向上や現場での安全確保などが挙げられる。そのような状況の中、国策としてICTを用いた建設工事が発注されているなか、舗装工事においては出来形測定や施工管理への適用にとどまっているのが現状である。しかし、今後は非破壊踏査技術を含めたICTの適用が品質管理へ拡張されると考えられる。
 今回、勉強会をとおして、舗装体の出来形・品質管理を中心とした非破壊技術について、海外の情報も含めた試験方法や測定技術を調査し、日本での適用性を含めた議論をすることができた。このような技術の舗装への適用はかならずできる技術であると考えられる。舗装や土木だけでなく様々な分野の技術者が一体となって、技術推進をしていければよいと考える。