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放射温度計の適用技術と測定法に関する調査検討

1. はじめに

 測定器の進歩や価格低下から、施工時の温度管理、供用時の表面温度測定などに、計測が簡便かつ迅速な非接触型の放射温度計を活用する場面が多くなっている。ところが、製造業や建築などの他分野では非破壊調査方法として規格等が提案されているものの、舗装分野では測定結果の適用範囲も模索段階である。
 そこで、本WGでは放射温度計の精度、信頼性、適用限界などを明確にすることを目的として、混合物内部温度および舗装表面温度を接触型の表面温度計および放射温度計による計測を通して試験法の提案と適用性の把握を行った。

2. 本WGの活動内容

 文献調査の結果、表面温度からの内部温度の推定は誤差が大きく、検討対象とせず、本WGの目的は放射温度計の精度、信頼性、適用限界などを明確にすることとした。

3. 一定温度において計測条件が計測値に与える影響(第1回共通試験)

 恒温室において様々な計測条件の影響を検証した結果、以下のことが分かった。
・アスファルト舗装面の場合、放射率は0.9〜0.98であれば測定誤差は少ない。
・放射温度計と路面の間に水蒸気が存在する場合、水蒸気の温度を表示する。
・放射温度計は、周囲の温度の急激な変化(温度ドリフト)により誤差が生じる。
・熱電対、表面温度計、放射温度計の検査、校正はほとんど行われていない。

4. 自然冷却時において計測条件が計測値に与える影響(第2回、第3回共通試験)

 アスファルト舗装工事の転圧時の表面温度測定を想定して、ホイールトラッキング試験用供試体の転圧直後から自然冷却する過程において、放射温度計、表面温度計、熱電対により表面温度を測定し、計測値の比較を行った。

 
写真-1 測定状況の例   図-1 試験結果の一例
     
 
写真-2 ホイールトラッキング試験用供試体の熱画像(左:ポーラス、右:密粒度)

ポーラスアスファルト舗装は、凹部の温度が凸部の温度よりも高いことから、凸部のみを測定している表面温度計に比べ、凹部を含めた範囲を平均している放射温度計の測定値が高くなる。
放射温度計の特徴として、測定面と放射温度計の間に水蒸気があると、放射温度計は水蒸気の温度を計測し、舗装面の計測ができないことが分かった。
表面温度計は応答が遅く、温度変化が速い場合の測定には向いていない。
風があると、表面温度計のセンサ部(金属板)が冷却されて、放射温度計や熱電対に比べ低い温度を表示する。

5.市販機器の調査

 放射温度計を選定する上での留意事項を以下に示す。
放射率を0.90〜0.98の範囲で固定ないし固定できるもの
常温〜180℃の温度範囲において、測定精度が±2℃あるいは±2%rdg以下のもの
測定視野の外周を確認できるサークルレーザ、または測定視野の上下2点のレーザマーカがあるものを推奨する
放射温度計は機種によって、放射温度計から路面までの距離Dと測定視野の直径Sの比D/Sが大きく異なるため、測定対象を考慮して選定する。なお、D/Sが10の場合、距離Dが1mのときの直径Sは10cmとなる。
 
  図-2 スポット比D/Sの概念

6.まとめ

 放射温度計が接触式温度計に比べて優位な点を以下にまとめる。
放射温度計は、接触式温度計よりも応答速度が早く、温度変化の追跡に適している。
放射温度計は、きめのある舗装面の平均温度を計測することができる。
 したがって、放射温度計の特性を把握することにより、舗設現場では接触式温度計よりも汎用性が高いものと考えられる。
 検討結果をもとに、アスファルト舗設現場での使用を想定し、留意事項などを取りまとめた「非接触型放射温度計を用いた舗装工事における表面温度管理の手引き(案)」を作成した。