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維持修繕に関する検討

1. はじめに

 現在、道路ストックとしての総延長は増加傾向にあるが、舗装の予算は近年減少しており、予算の制約条件下における舗装工事では、ライフサイクルコスト(以下、LCC)の最小化のため維持管理の効率化が求められてきている。

 また、現在の性能評価法は新設工事のみを対象としているため、将来的には維持修繕技術の評価方法を確立する必要があると考える。特に、維持工法については検討も少なく、維持作業の時期や工法の選定、維持費用の算定方法等が明確にはなっていない。

 そこで、本WGは以下に示す2つの項目について検討を行った。

  1. ポットホールに用いる補修用常温混合物について、降雨時の耐久性を評価するための簡易ポットホール走行試験における試験精度向上に関する検討
  2. 維持工法を組み込んだ維持修繕計画に関する検討
 

2. 簡易ポットホール走行試験の試験精度向上に関する検討

 簡易ポットホール走行試験の試験精度向上に関する検討は、図−1に示すフローに従って実施した。

   

図-1 簡易ポットホール走行試験における試験条件の検討フロー

 まず、従来の試験方法1)2)3) における試験精度を調べるため、ホイールトラッキング供試体(密粒度アスコン(13)、StAs60/80)の中央部分に電動ピックで疑似ポットホールを削孔し(写真−1)、その中に補修用常温混合物を詰めて走行試験用供試体を作製した(写真−2)。


写真-1 ポットホール作製状況             写真-2 供試体作製完了

 このように6機関で走行試験用供試体を作製して共通試験を実施したところ、3mm沈下時の走行回数における変動係数が118.1%と大きな数値となった。

   

 このため、軸付き円柱板(写真−3)を用いて疑似ポットホールの供試体(写真−4)を作製する等、図−1のフローに従い試験条件を統一しながら共通試験を実施したところ、第6回目の共通試験で変動係数が20%程度まで抑制することができた。


写真-3 軸付き円柱板設置状況          写真-4 疑似ポットホール作製完了
   

 また、走行試験時に試験恒温室が20℃の室温を保てない機関が多くあったため、室温20℃と室温30℃とで走行試験を実施して試験結果を比較したところ、試験結果における変動係数が20%以内とばらつきもないことから、30℃を超えない範囲であれば評価可能と判断した。

 

3. 維持工法を組み込んだ維持修繕計画に関する検討

 効率的な維持管理という観点から考えると、LCCを考慮して設計を行うことが重要となってくる。そこで、補修用常温混合物によるポットホールの補修と表面処理をとした維持工法を組み込んだ、経済的な維持修繕計画について検討した。

図-2 舗装構成

 主な概要として、交通条件はN7交通とし、道路条件は片側2車線の4車線道路、各幅員は3.0mとした。また、舗装構成は図−2に示す通りとした。

 そして、維持修繕の方法については、日常的な維持管理は補修用常温混合物により行い、これに表面処理工法による維持と打換えや2層切削オーバーレイ(以下、OL)による修繕工法を組み合わせた維持修繕を実施することとした。ここで、維持修繕における対策工法のパターンと対策工法の延命効果および補修費用をそれぞれ表−1、表−2に示す。

   
表-1 対策工法パターン


表-2 対策工法の延命効果と補修費用

 さらに、維持費用については、旧建設省4)の研究で使用されたMCIに対応した単位面積当りの維持費用の表に注目し、表から近似式を算出し、さらにパッチング材料等の補修材の耐久性やコストを考慮できるように近似式を修正した。修正した維持費用Yを、式(1)に示す。

Y = 186.8−16.7 MCI ×{(耐久性の比率)/(コストの比率)}  ・・・・ 式(1)

 これらの条件等によりLCCを算出した結果は表−3の通りとなり、パッチングに使用する補修用常温混合物を耐久性の高い補修用常温混合物で補修を実施することで、LCCを削減できることがわかった。

   
表-3 LCC算出結果

 よって、耐久性の高い補修用常温混合物や表面処理等の維持工法を適切に組み込むことにより、LCCを安くすることができ、効率的な維持管理に繋がると考えられる。

 

4. 本検討による成果

 ポットホールの補修に用いる補修用常温混合物の降雨時における耐久性を評価する簡易ポットホール走行試験について、試験精度向上に向けた試験条件の検討を重ねた結果、走行回数の変動係数は20%程度に縮小でき、疑似ポットホールの形状等の影響を受けにくい簡易ポットホール走行試験の試験条件を見出すことができたことから、その検討成果を反映した試験方法を提案した。

 また、ポットホールの補修や表面処理といった維持工法を取り込んだLCC算出の検討を行った結果、耐久性の高い補修用常温混合物や表面処理等の維持工法を適切に組み込めばLCCを低減することが可能でることが確認できた。このLCCの検討のうち、維持費用についてはこれまで詳細に検討されてきていなかったため、補修用常温混合物等の補修材の耐久性やコストを考慮できるように以下の式を導入することを提案した。

Y = 186.8−16.7 MCI ×(耐久性の比率)/(コストの比率)  ・・・・・ 式(1)


<参考文献>

1) 峰岸順一ら:低騒音舗装のポットホールに使用する高性能型常温混合物の評価、舗装工学論文集、2007、第12巻131
2) 峰岸順一ら:低騒音舗装の破損実態と補修用常温混合物の室内評価法の検討、都土木技センター年報、H19 .6
3) 首都高速道路における補修用常温混合物料の試験施工、舗装、2012.2
4) 建設省:舗装の管理水準と維持修繕工法に関する総合的研究、昭和62年