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性能評価に関する検討

1. はじめに

 舗装の性能規定化によって道路管理者が舗装の設計期間、舗装計画交通量、性能指標とその値を自らの判断で設定することが可能となり、また、仕様規定に比べて設計・施工の自由度がはるかに高いものとなり、建設コストの縮減や環境負荷の軽減などに寄与しやすい仕組みとなった。

 そこで、今後舗装技術が発展していくためにも、この性能規定化をその導入目的に沿った形で道路管理者・利用者のニーズが適正に反映され、そして舗装技術が適切に評価されるよう、舗装業者の立場から各性能指標の意義や基準値のあり方、性能指標を適切に評価できる性能評価値の提案等の活動を行った。

2. 活動内容と成果

1) 平成19年度

 舗装の性能を規定した工事発注の現状を把握するために、平成11年度から平成20年度まで発注された性能規定方式工事および総合評価落札方式工事から、性能指標の評価項目別に標準値を調べ、一覧表を作成した。

2) 平成20年度

 性能指標のうち、施工直後に評価する塑性変形輪数を対象とした発注事例が多いことから、これを対象とし、検討を行った。

  • 「塑性変形輪数」と、試験法便覧に示されるホイールトラッキング試験により材料特性を評価した「動的安定度」と、評価方法や基準値などが類似していることから、混同して理解されているように見受けられるため、『塑性変形輪数の基礎』と題したガイドラインを作成した。
  • 塑性変形輪数の標準値や按分方法の設定は、塑性変形輪数を求める際の試験特性値やその精度をよく理解した上で定める必要がある。特に動的安定度は6,000(回/mm)程度を超える場合では明確な優位性を得られない。これらを踏まえ、施工者の立場から、基準値や按分方法を提案した。
  • 塑性変形輪数は現場のわだち掘れ量を直接評価するものではない。長期的な供用性を示す性能指標に“わだち掘れ”を導入する際の検討資料として、現状では各層と実道わだち掘れの関係などを示した事例や文献を収集しとりまとめた。

3) 平成21年度

 平成21年度に、東北地方整備局において5年後の舗装の性能を規定した「長期保証付き新設工事」が発注され、また、関東地方整備局においても性能規定区間にサービス水準を設け、これを2年間維持しなければならないという試行工事も発注された。

 海外では既に導入されている「性能規定型維持管理契約」という概念を持つ舗装工事が、わが国にも導入されたという新しい動きがあった。

 この事実を踏まえ、今後、わが国でも一般的な発注となっていくであろう性能規定型維持管理契約について様々な検討を行なった。

  • わが国の性能規定発注の新しい動きとして、最近の維持管理契約付きの発注事例をとりまとめた。
  • 海外の性能規定型維持管理契約の事例を既往の文献を参考に国別にとりまとめた。
  • わが国における性能規定型維持管理契約方式の検討として、とくに舗装を対象に、性能のあり方、契約と発注形態、および課題について検討し取りまとめた。

4) 平成22年度

 わが国に性能規定型維持管理契約を導入する場合において、「性能規定型総価方式維持管理契約」を提案し、具体的検討を行なった。

  • 従来の維持修繕契約と性能規定型総価方式維持管理契約の違いを表に取りまとめた。
  • 道路ユーザーのニーズに対して道路管理者が提供すべきサービスと管理指標の関係を表に取りまとめた。
  • 舗装の管理目標を設定するための根拠となる知見について、これまでの報文や研究成果を調べ、一覧表を作成した。
  • 具体的な“舗装の管理目標案”として提案した。
  • 性能規定型総価方式維持管理契約の導入に向けたシナリオを提案すべく、課題と対応方針、および導入に向けたロードマップ案を作成した。