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すべり抵抗性に関する調査

1. はじめに

写真-1 DFテスタによる共通試験

 路面のすべり抵抗性を評価する一般的な試験方法の一つとして、回転式すべり抵抗測定器(以下、「DFテスタ」という)による動的摩擦係数(以下、「RSN」という)の測定方法がある。

 しかし、機差、温度依存性、ゴムピースの摩耗量等の測定条件が測定値に及ぼす影響が明確になっていない。

 そこでTPTでは、共通試験等により測定値に影響を与える要因等について調査し、DFテスタによるRSNの測定方法・評価方法の確立を目指した。

 

2. 試験装置の概要

 DFテスタの構成の一例を図-1に示す。DFテスタは、水平に回転する円板にタイヤゴムを取り付け、これに一定の荷重を加え、この時タイヤゴムに加わる摩擦力と、その時のタイヤゴムの線速度(円板の回転速度)を測定することにより路面のすべり抵抗値を測定するものである。

図-1 DFテスタの構成(例)

3. 調査概要

年度ごとの検討内容

  • 平成15年度
    • 同一測点における繰り返し測定によるRSNの変化傾向
    • 散水時の水頭差がRSNに与える影響
    • 円盤落下時の速度がRSNに与える影響
    • 散水開始時の速度がRSNに与える影響
    • DFテスタの機差
  • 平成16年度
    • 繰り返し測定に伴うRSNの減少傾向の要因および適切な評価方法
    • 散水時の水頭差および散水開始速度がRSNに与える影響
    • 円盤落下時の速度がRSNに与える影響
    • RSNの温度依存性
    • 実車によるすべり摩擦係数の温度依存性
    • 実車によるすべり摩擦係数とRSNの相関
  • 平成17年度
    • 散水時の水頭差(流量)がRSNに与える影響
    • ゴムピースの摩耗がRSNに与える影響
    • RSNの温度依存性
    • 実車によるすべり摩擦係数の温度依存性
    • 実車によるすべり摩擦係数とRSNの相関
  • 平成18年度
    • DFテスタの機差
    • ゴムピースの摩耗量がRSNに与える影響
    • RSN測定時の水膜厚の測定
    • BPNのばらつきの確認
  

調査により得られた結果

1) 繰り返し測定がRSNに与える影響

 同一箇所で試験器を移動せずに繰り返し測定を行った結果、RSNは変化(減少)し続ける傾向があり、特に低速度領域においてその傾向が大きいことが分かった。また、測定回数1回目と2回目以降の値の差が大きいことから、通常の測定では同一測点で4回測定し、2〜4回目のデータを平均することとした。

2) 散水時の水頭差及び散水開始速度がRSNに与える影響

 水頭差(路面から水タンク水面までの高さ)及び散水開始速度がRSNに与える影響について検討した結果、水頭差は流出水量に影響を与え、舗装種によっては流出水量がRSNに影響する場合があることから、事前に水頭差と流出水量の関係を把握し、測定時の流出水量を統一(ASTMに記載されている3.6L/minの流量となる水頭差で測定)することが望ましいことが分かった。一方、散水開始速度とRSNの関係には明確な傾向は見られなかった。

3) 円盤落下時の速度がRSNに与える影響

 円盤の落下時速度を変化させ、落下時速度がRSNに与える影響を検討した結果、ゴムピースが路面に接地した直後は円盤が跳ねRSNに影響を与えることから、評価対象速度に関係なく、円盤を落下させる速度は90km/h程度が適切であることが分かった。

4) ゴムピースの摩耗量がRSNに与える影響

 ゴムピースの摩耗量がRSNに与える影響を検討した結果、摩耗量が0.5mm程度で機器間のばらつきに相当するRSNの変化が生じるため、ゴムピースの交換は摩耗量0.5mm程度を目安にするとよいことが分かった。また、摩耗量が1mmを超えると速度依存性を評価できなくなるため、摩耗量1mmがゴムピースの使用限界点(必ず交換が必要)であることが分かった。

5) DFテスタの機差の確認

 DFテスタの測定器間におけるRSNのばらつきを検討した結果、測定前にDFテスタを校正することで測定器間のばらつきは小さくなるものの、その他の諸条件(ゴムピースの状態、散水条件等)を統一しても、ばらつきを無くすことは困難であることが分かった。

6) RSNの温度依存性の確認

 RSNの温度(気温・路面温度)依存性について検討した結果、RSNは温度によって変化し、特に密粒度・コンクリート舗装では高い相関を示すが、温度勾配の絶対値は非常に小さいため、基準とする温度と測定時の温度差が小さい場合は、温度補正を考慮する必要はない。ただし、測定時の温度が極端に高い、あるいは低い場合(夏季の日中、あるいは冬季の夜間等)は、温度による影響を考慮する必要があることが分かった。

7) 実車によるすべり摩擦係数とRSNの相関

 すべり抵抗測定車によるすべり摩擦係数とRSNの相関性を検討した結果、測定速度40〜60km/hの範囲において高い相関性があり、特に、測定速度60km/hでは、すべり摩擦係数(Y)とRSN(X)はほぼY=Xの関係となることが分かった。 

4. 本研究によって提案された試験方法

  • DFTのRSNによるすべり抵抗値測定方法(案)

 本研究成果の一部は日本道路協会『舗装調査・試験法便覧』(平成19年6月)及び『舗装性能評価法』(平成18年1月)に反映されている。なお、今後はすべり抵抗値を性能指標とした性能規定工事の発注等が予測されるため、測定機差を踏まえた上でDFテスタを活用していくことが重要であると考える。