(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成23年

平成23年9月 報文抄録
 

【報文】 岩盤の弱層せん断強度シミュレーションの開発

倉橋稔幸・吉田直人・佐々木靖人・矢島良紀・寶谷 周

<抄録> 本報告では、弱層壁面上下の凹凸面の形状から弱層のせん断強度を予測するシミュレーションソフトウエアを自然岩盤の節理に適用し、算出したせん断強度を一面せん断試験のせん断強度と比較し適用性を検証した。その結果、算出されたせん断強度は一面せん断試験とほぼ同等の値を示し、かみ合わせが悪い自然岩盤にも適用可能であることを示した。

<キーワード> 弱層、シミュレーション、せん断強度、一面せん断試験

 

【報文】 地下水排除工のボーリングの施工実態に関するアンケート調査について(その2:保孔管編)

阿部大志・武士俊也・神山嬢子・藤澤和範

<抄録> 地すべりの地下水排除ボーリング工の施工、孔曲り、保孔管の実態を把握するためにアンケート調査し、回答のえられた現場技術者176名を対象に分析を行った。本稿ではアンケートの回答から保孔管に関して使用状況、設置のトラブルと対策、保孔管に求められる機能、ストレーナの構造等について報告する。

<キーワード> 地すべり、地下水排除工、保孔管、アンケート

 

 

【報文】 山地河道における土砂移動特性に関する現地調査

箱石憲昭・福島雅紀・櫻井寿之

<抄録> ダム地点上流の山地河道における土砂移動特性を把握するため、河床礫にICタグや低周波発信機を埋設し、出水時の移動状況について調査した。その結果、今回の現地調査の条件(水深粒径比30程度、河床材料の最大粒径500mm程度)において、既存の粒径別移動限界算定式である修正Egiazaroff式の適用により、比較的精度良く移動限界粒径を算定することができることがわかった。

<キーワード> 山地河道、ICタグ、低周波発信機、移動限界粒径、現地調査

 

 

【報文】 霞ヶ浦における沈水植物移植実験―沈水植物群落再生を目指して―

大寄真弓・矢島良紀・佐貫方城・三輪準二

<抄録> 湖岸植生帯が衰退した湖沼における、沈水植物群落再生手法を確立するために、霞ヶ浦において、沈水植物の移植実験を行い、平成22年10月から23年6月までに9回のモニタリング調査を実施した。その結果、消波構造物の背後水域においては、現在の霞ヶ浦の諸条件下でも沈水植物の定着、群落化は可能であることが明らかになった。

<キーワード> 沈水植物、移植、蛇篭、消波構造物、底質粒径

 

 

【報文】 沈水植物が有する波浪低減効果

大石哲也・三輪準二・萱場祐一

<抄録> 本研究では、大型実験水路に霞ヶ浦の1/2縮尺スケールの湖岸を作成し、沈水植物の設置範囲および設置密度を変化させ、沖波波高H0=10〜30cmの波に対する波浪低減効果を検証した。実験結果より、波浪低減効果は人工藻の設置範囲と設置密度が大きく関係していた。また、沈水植物は砂移動を抑制する漂砂制御効果があり、砂浜の安定化に大きく寄与する可能性が高いことが分かった。

<キーワード> 沈水植物、霞ヶ浦、減衰効果、二次元大型実験水路

 

 

【報文】 道路橋橋脚への高強度鉄筋の適用に関する調査

玉越隆史・北村岳伸・横井芳輝・吉川 卓

<抄録> 高強度鉄筋を用いた道路橋の橋脚の耐震設計における評価手法を確立することを目的として、縮小橋脚模型を用いた交番載荷実験による検討を実施した。調査の結果、軸方向鉄筋の強度や橋脚基部に作用する軸圧縮応力度の違いにより、橋脚の破壊時の鉄筋の破断状況や耐荷力の低下傾向に違いがみられることが確認された。

<キーワード> 道路橋、RC橋脚、高強度鉄筋、耐荷力、交番載荷実験

 

 

【報文】 樋門門柱部の耐震性に関する載荷実験

中田芳貴・谷本俊輔・中島 進・佐々木哲也

<抄録> ゲートを有する水門及び樋門は、一般に、戸当たりとの取り合いや施工性等の都合から門柱の断面形状がL形であるものが多く、また、門柱及びゲート操作台から構成されるラーメン構造形式であることが多い。このような複雑な断面形状及び構造系を有する門柱について、樋門門柱部の耐力・塑性変形能及びその評価方法を明らかにすることを目的とし、樋門門柱の正負交番載荷実験を行った。水流直角方向に載荷した実験の結果、載荷方向に対して圧縮力を受け持つ断面領域が小さい領域のみに損傷が集中すること、ラーメンと構造系の終局は、柱部材のある特定の塑性ヒンジ領域の損傷により決定される場合と、各柱端部の塑性ヒンジ領域の損傷により決定される場合があることを確認した。

<キーワード> 樋門、門柱、耐震性能、正負交番載荷実験

 

 

【報文】 膨張材によるコンクリートの収縮低減

松本健一・片平 博・渡辺博志

<抄録> コンクリートの収縮ひび割れ防止対策に使用する膨張材に関して、コンクリートの配合、打設温度、養生時の水分供給の有無が膨張量に与える影響を実験により検討した。この結果、すべてのケースで膨張材の効果を確認したが、自己収縮等の影響によって膨張材の効果が必ずしも十分でないケースも確認された。

<キーワード> コンクリート、膨張材、収縮ひずみ、養生条件、自己収縮

 

 

【現地レポート】 淡輪高架橋高強度コンクリートの耐久性確保の取組

河田真一・神田隆司

<抄録> 高強度コンクリ−トは硬化後の組織が緻密であり、本来、長期耐久性に優れる材料であるが、セメント量の増加に伴い、施工性の低下、耐久性上の問題となるひび割れ発生の可能性の増大など部材に応じた課題を有する。本文は、淡輪高架橋における学識経験者による委員会を通じて行った検討結果について報告するものである。

<キーワード> 高強度コンクリート、長期耐久性、収縮ひずみ、温度ひび割れ、高流動

 

 

【土研センター】 コンクリート研究室の開設と活動

大田孝二・五島孝行・柴田辰正

<抄録> わが国では老朽化する既存インフラの維持管理が課題となっている。当センターでは、そのような問題に対応を図るべく、本年4月より新たにコンクリート研究室を開設した。当面の活動テーマは『ASRと疲労の複合劣化』とするが、その他の種々の課題への対応を通じ、コンクリート構造物の保全に努めていきたいと考えている。

<キーワード> コンクリート構造、維持管理、アルカリ骨材反応、調査・診断技術