(一財)土木研究センター/刊行物/月刊誌土木技術資料抄録/平成23年

平成23年1月 報文抄録
 

【特集報文】 既設構造物管理高度化のための非破壊検査技術開発における異分野との連携

  木村嘉富・村越 潤・高橋 実

<抄録> 高度経済成長期に整備された社会資本施設の高齢化が進む中、一部の施設では深刻な劣化損傷が報告されており、これら施設を安全な状態で合理的に維持管理していく上で診断技術の高度化が重要な課題となっている。本稿では、道路橋管理の高度化・効率化を図るための非破壊検査技術の開発に関し、中長期の研究開発を視野に、他分野と連携して進めている事例を紹介する。

<キーワード> 維持管理、非破壊検査、中性子、可視化技術、応力発光体

 

【特集報文】 低炭素社会に貢献する舗装技術

  川上篤史・新田弘之・久保和幸

<抄録> 低炭素社会に向け、わが国では低炭素舗装技術の開発およびCO2排出量の定量評価が求められている。本稿では、低炭素舗装技術のうち、中温化技術および舗装再生工法について概要を紹介するとともに、筆者らがこれまでに行ってきた低炭素舗装技術の評価として、ライフサイクルを通じたCO2排出量の定量評価に関する研究結果について紹介する。

<キーワード> 低炭素舗装技術、中温化技術、舗装再生工法、CO2排出量、Life-Cycle CO2

 

【特集報文】 衛星リモートセンシング技術の土砂災害への応用

  水野正樹・林 真一郎・清水孝一・小山内信智

<抄録> 土砂災害対策における、長期的な流域監視のため、及び土砂災害発生時の迅速な大規模崩壊地等の把握のために、地球観測衛星の光学センサ・合成開口レーダーを用いて計測・解析する衛星リモートセンシング技術の応用することが有効であることを事例に基づき示した。

<キーワード> 衛星、リモートセンシング、土砂災害発生時、流域監視、大規模崩壊

 

【特集報文】 ゲリラ豪雨対策のためのXバンドМPレーダ

  山本 聡・土屋修一

<抄録> 豪雨の監視強化のために平成22年7月より関東、中部、近畿、北陸の4地域にXバンドマルチパラメータ(以下MPと記述)レーダを整備し、試験運用を開始した。本稿は、この新たなXバンドMPレーダの特色について紹介するとともに、この観測結果を活用した今後の豪雨情報の探知と情報提供の可能性について述べる。

<キーワード> 豪雨対策、豪雨監視、XバンドMPレーダ、試験運用

 

【特集報文】 最近のダム再開発事業における構造に関する技術的課題

  山口嘉一・坂本博紀

<抄録> 近年、我が国の財政事情、社会条件などを反映して、ダムの嵩上げ、堤体ないしは地山への放流管増設などの再開発事業の重要性が増してきている。また、これらの事業においては、従来よりも大規模化するとともに、厳しい荷重条件下での設計施工が強いられている。本報文では、最近のダムの再開発事例を取り上げダム構造に関する技術的課題について紹介する。

<キーワード> ダム、再開発、堤体穴あけ、嵩上げ

 

【特集報文】 下水道の現場で活躍する最新の自動化技術

  横田敏宏・深谷 渉・宮本豊尚

<抄録> 我が国の下水道管きょは、地球10周分に相当する42万q(平成21年度末現在)に達している。管きょの管理は、道路陥没や汚水流出等を防ぐ上で極めて重要であるが、管きょの中は暗く、非常に狭い空間である他、悪臭の発生、突発的な水位上昇、有毒ガス発生などの危険が潜んでおり、管きょ内における作業環境は非常に厳しい。このような状況下、下水道管きょの建設、維持管理の分野では、人力による管きょ内作業を回避すべく、機械による自動化技術の研究開発が進められている。

<キーワード> 下水道管きょ、改築、維持管理、テレビカメラ、更生工法

 

【特集報文】 空港アスファルト舗装施工時の舗装温度解析プログラムの開発

  坪川将丈

<抄録> 空港アスファルト舗装におけるオーバーレイ補修工事は通常夜間に実施されるが、工事終了直後の早朝に供用を開始することから、初期わだち掘れの発生を防ぐためには、供用開始までに舗装温度を十分に低下させる必要がある。以上の背景から、アスファルト舗装の施工中の舗装温度を時系列で解析する舗装温度解析プログラムを開発した。

<キーワード> 温度解析、オーバーレイ、有限要素法、アスファルト舗装、空港

 

【特集報文】 設計、施工、維持管理にわたる橋梁の3次元データ利活用

  青山憲明・井星雄貴・東耕吉孝

<抄録> 3次元データの円滑な流通によって、3次元データを利用した建設生産システムの高度化が図られ、生産性向上に寄与すると考えられる。そこで、3次元データの利用が進んでいる橋梁分野を対象として、3次元化の現状と課題を整理した上で、3次元データそのものや、3次元形状を可視化した3次元ビューを実際の公共事業において如何に適用するかについて、「国土交通省CALS/EC推進会議3次元データ利活用検討WG」において検討した内容を紹介する。

<キーワード> CALS/EC、橋梁、3次元データ、建設生産システム、設計ミス防止

 

【特集報文】 国土管理地盤情報の構築と地質リスクマネジメント

  佐々木靖人・浅井健一・倉橋稔幸・品川俊介

<抄録> 国土管理に必要な地質・地盤情報群を「国土管理地盤情報」と位置づけ、その定義、種類、情報整備の意義などを述べた。また、土木研究所が実施する国土管理地盤情報の構築・活用研究について紹介した。

<キーワード> 国土管理、地質リスク、国土管理地盤情報、データベース、KuniJiban Land management, Geo-risk, Geotechnical information system for land management, Database, KuniJiban

 


平成23年2月 報文抄録
 

【特集報文】 道路橋保全を取り巻く状況と課題

  玉越隆史

<抄録> 我が国の道路橋建設を取り巻く状況(高齢化の進展、重篤な損傷の顕在化など)を概観し、これまで行われてきた定期点検の結果などから高齢化が進む道路橋の実態について紹介するとともに、そこから浮かび上がる維持管理の課題とその解決のために必要な取組みについての現状を述べる。

<キーワード> 維持管理、点検、予防保全

 

【特集報文】 塩害を受けたRC床版橋の載荷試験

 

岡 智彦・花井 拓・木村嘉富

<抄録> 構造物メンテナンス研究センターでは塩害により損傷を受けたコンクリート橋の耐荷性能評価手法の提案に向け、塩害橋の撤去部材を用いた臨床研究を行っている。本稿では沿岸部に架設されていたRC床版橋の撤去部材を用いた載荷試験を紹介する。載荷試験にあわせて外観と材料の劣化調査を行い、これらの試験結果を基に撤去部材の耐荷性能の評価を試みた。

<キーワード> 塩害、RC床版橋、鉄筋腐食、耐荷性能、臨床研究

 

【特集報文】 腐食劣化により崩落に至った鋼橋の変状モニタリング

 

下里哲弘・村越 潤・玉城喜章・高橋 実

<抄録> 琉球大学とCAESARは、鋼橋の状態監視技術の調査研究の一環として、橋梁管理者の協力を得て、2008年末より著しい腐食劣化の生じた鋼橋の変状モニタリングを共同で実施し、崩落過程に係る映像を含む貴重な情報を収集した。本文では、変状モニタリングと崩落過程の概要について監視カメラの映像を中心に報告する。

<キーワード> モニタリング、鋼橋、維持管理、腐食、崩落

 

【特集報文】 腐食劣化の生じた鋼トラス橋の現地載荷試験と耐荷性能評価

 

村越 潤・遠山直樹・澤田 守・有村健太郎

<抄録> 著しい腐食劣化の生じた鋼トラス橋を対象として、現地載荷試験による橋全体系の挙動計測を行うとともに構造解析による耐荷性能の検討を行った。その結果、橋全体系の挙動については弾性3次元FEM解析により概ね再現できること、また、トラス格点部斜材取付け部では、主構部材に面内・面外曲げ応力が発生しており、かつ腐食劣化が著しい部位でもあることから、部材および橋全体系の残存耐荷性能評価においては、これらの影響を適切に評価することが重要であることが分かった。

<キーワード> 臨床研究、鋼トラス橋、載荷試験、腐食劣化、耐荷性能

 

【特集報文】 橋面アスファルト舗装の変状とRC床版の疲労

  田中良樹・村越 潤

<抄録> 道路橋RC床版の疲労による抜け落ち事例は今日も見られる。橋面アスファルト舗装のひび割れから浸入した水が床版コンクリートの急激かつ局所的な疲労損傷をもたらすことがある。この点について、最近の試験調査や現場の写真を交えて概説する。床版抜け落ち防止に向けて、これらの現象の理解が必要であることを述べ、今後の課題を提示する。

<キーワード> 床版、アスファルト、舗装、防水、(アスファルト舗装の)ひび割れ、(RC床版の)抜け落ち

 

【特集報文】 2009年静岡県駿河湾地震による免震橋の地震応答とその分析

  崔 準ko・星隈順一・張 広鋒

<抄録> 2009年8月にマグニチュード6.5の静岡県駿河湾地震が発生し、震央から約50kmの位置にある29径間連続免震橋に設置した地震観測装置から観測記録データが得られた。本検討ではこの貴重な地震観測記録を活用して、本免震橋の地震時挙動の推定精度の検討を行った。

<キーワード> 2009年静岡県駿河湾地震、免震橋、地震観測記録、地震応答解析

 

【特集報文】 実橋採取試料によるコンクリート表面被覆材料の耐久性評価

 

佐々木 厳・加藤祐哉・守屋 進・西崎 到

<抄録> 表面被覆材料はコンクリート構造物の塩害対策などに広く用いられているが、被覆工の健全性を評価する方法は目視等の主観的評価に頼っているのが現状であり、適切な評価方法の開発が課題となっていた。本文では、長期供用された実橋からコアリング等により採取した試料を活用した、評価試験方法の開発に関する検討、ならびに各種被覆材料の耐久性評価結果を報告する。

<キーワード> コンクリート構造物、表面被覆、暴露試験、耐久性、遮塩性

 

【現地レポート】 離島架橋を塩害から守る

 

花井 拓・仲嶺 智・砂川勇二・木村嘉富・田中良樹

<抄録> CAESARでは、2009年3月に沖縄県などと協力協定を結び、沖縄県離島架橋100年耐久性検証プロジェクトを実施している。これまでの取組みとして、新設橋における長期観測環境の整備とデータ収集、既設橋の塩害による被害状況の把握とデータの収集・分析、塩害メカニズムの解明のための橋梁上部工の付着塩分調査、などを実施している。

<キーワード> 沖縄、離島架橋、塩害、長期観測、耐久性

 

【現地レポート】 市町村の道路橋管理の向上にむけた実践的取組み

  太田貞次

<抄録> 市町村が管理する橋梁は、技術者数、技術力、予算が不十分な中で、老朽化対策に苦慮している。本報告では、市町村の道路管理者の技術力向上を目指した「実践的橋梁維持管理講座」を紹介すると共に、高等専門学校教員が協力して取組んでいる市町村管理橋梁の老朽化対策活動について報告する。

<キーワード> 市町村、橋の老朽化問題、講座活動、現地研修、長寿命化修繕計画

 


平成23年3月 報文抄録
 

【報文】 すべり面の急傾斜部における孔内傾斜計観測孔の挙動とその解釈

 

本間宏樹・神山嬢子・千葉伸一・藤澤和範

<抄録> すべり面の急傾斜部では、座屈してプローブが挿入できなくなった孔内傾斜計のガイド管内の縮み量を伸縮計により計測することで、地すべり土塊の沈下量を推定することができる。また、ガイド管位置のすべり面の傾斜が把握できれば、伸縮計の縮み量から土塊の水平変位量を見積もることができる。

<キーワード> 孔内傾斜計、ガイド管、座屈、伸縮計、沈下量

 

【報文】 IT地盤傾斜計測システムを用いた初生地すべりの変動観測事例

  千田容嗣・藤澤和範・宇都忠和

<抄録> 過去に滑動履歴がない山岳道路斜面等で、突如地すべりが発生する現象(初生地すべり)が多く生じています。このため、初生地すべりの初期に生じると考えられている微小な斜面変動の検知方法を検討する必要があると考えています。そこで、初生地すべりと思われる箇所にIT地盤傾斜計測システムで観測した結果、変動を一定精度で捉えられたので、その状況を報告します。

<キーワード> 初生地すべり、クリープ変形、加速度センサ、地盤傾斜計

 

 

【報文】 霞ヶ浦の底泥表層の巻上げ時における栄養塩類の溶出特性

  久岡夏樹・中薗孝裕・阿部千雅・鈴木 穣・南山瑞彦

<抄録> 霞ヶ浦西浦の底泥を用いて、底泥巻上げ時の栄養塩類の溶出について詳細な挙動の確認を行い、その特性を評価した。その結果、アンモニア態窒素の溶出は巻上げによって促進されることが確認された。

<キーワード> 霞ヶ浦、底泥、巻上げ、栄養塩、溶出

 

 

【報文】 断水実験による住民の渇水受忍限度に関する実態調査

  三石真也・依田憲彦・豊田忠宏

<抄録> 人工的に取水を制限する断水社会実験をさまざまな階層の住民を対象として行い、アンケートにより断水時に被害として認識された事項を把握した。そして、結果について統計解析し、渇水時における災害時要援護者を特定するとともに渇水受忍レベルを設定した。さらに、ダムにおける合理的な取水制限の設定手法について、シミュレーションを実施した。

<キーワード> 断水社会実験、受忍レベル、災害時要援護者、取水制限、ダム運用

 

 

【報文】 道路環境影響評価の技術手法「工事中の濁水」

  山本裕一郎・曽根真理・井上隆司

<抄録> 実際の道路環境影響評価における実績や道路管理者からの要望を踏まえ、「工事中の濁水」に関する道路環境影響評価の技術手法を平成21年6月に策定した。本稿では、技術手法の検討にあたり実際の工事現場で計測した工事中の濁水の実態調査結果と共に技術手法の内容を紹介する。

<キーワード> 環境影響評価技術、道路事業、水質

 

 

【報文】 各種道路橋床版における疲労損傷の非破壊検査システムの開発

  鎌田敏郎・阪上隆英・玉越隆史

<抄録> 道路橋のRC床版における水平ひび割れ、鋼床版における疲労き裂を検出するための非破壊検査システムについて研究開発を行った。供試体及び実橋梁での検出試験の結果、水平ひび割れに対しては衝撃弾性波法の、疲労き裂に対しては自己相関ロックイン赤外線サーモグラフィ法の適用性を明らかとした。

<キーワード> 道路橋床版、非破壊検査、衝撃弾性波法、自己相関ロックイン赤外線サーモグラフィ法

 

 

【報文】FRP製橋梁検査路の耐荷力特性

  星野 誠・玉越隆史

<抄録> 厳しい腐食環境に有効なFRP製橋梁検査路について、作業員の不慮の墜落による衝撃荷重に着目した実験を行い、鋼製橋梁検査路と同等な性能を確保するための検討を行った。荷重−変位関係と損傷形態、発生する衝撃荷重の程度を把握し、安全性の程度が確認できた。ただし、工学的な信頼性に劣るという課題も浮かび上がった。

<キーワード> 橋梁検査路、FRP、衝撃載荷試験、脆性的な破壊

【報文】 地震災害時における道路管理者の対応事例のデータベース構築

  山影修司・高宮 進・宇佐美 淳

<抄録> 防災訓練等を通じて、道路管理者は地震災害時の対応を理解する必要がある。また、それに加えて過去の対応事例等から災害対応能力の向上を図ることが考えられる。本報文では、災害記録集等から道路管理者の対応事例とその課題等をまとめ、さらには、それら対応事例等を容易に検索、閲覧できるようデータベースとして構築した結果について報告する。

<キーワード> 地震、道路管理者、対応事例、データベース、検索

 

 

【現地レポート】 東名高速道路牧之原地区地震災害の復旧とその後の対応

  菅 浩一

<抄録> 平成21年8月11日に発生した駿河湾を震源とする地震により、東名高速道路牧之原SA(サービスエリア)付近の盛土のり面が崩落した。本文は、その復旧工事及び「東名高速道路牧之原地区地震災害検討委員会」での検討結果について報告するものである。

<キーワード> 盛土、地震、災害復旧、泥岩、スレーキング

 

 

 
平成23年4月 報文抄録
 

【特集報文】 舗装マネジメントの体系〜より効率的・計画的な舗装管理に向けて〜

  渡邉一弘・久保和幸

<抄録> 舗装マネジメントを実践するにあたり、その目的を時代に即して再整理し、「透明性のある舗装管理の実現」と「最効率的な舗装管理の実現」と提示するとともに、舗装マネジメントのフローを概説し、より効率的・効果的な維持管理に向けて留意すべき事項を示した。

<キーワード> 舗装、マネジメント、体系、効率的、計画的

 

【特集報文】 路面凹凸がユーザーの乗り心地評価に及ぼす影響

 

石田 樹

<抄録> 本研究の目的は、路面の乗り心地評価のための定量的かつ客観的指標の開発である。ドライビングシミュレータを用いて乗り心地の主観評価を行うとともに、平坦路および凹凸路において、ストレスの定量的・客観的評価に有効とされる心拍数変化を計測した。平坦路に比べ凹凸路面走行時の被験者の心拍数は有意に増加した。上下加速度が増加するに従い心拍数の増加量は増加し、心拍数増加量が大きいほど主観による乗り心地評価は悪化する傾向が見られた。被験者ごとの回帰分析により、心拍数増加量により主観評価を説明するモデルを提案すると共に、被験者の振動刺激への感受性を考慮することが重要であることを示した。

<キーワード> 乗り心地、ラフネス、心拍数、IRI、ドライビングシミュレータ

 

 

【特集報文】 アスファルト・コンクリート塊の持続的なリサイクル

 

新田弘之・佐々木 巌・西崎 到・川上篤史・久保和幸

<抄録> アスファルト・コンクリート塊のリサイクルは進んでおり、その再資源化率は98%と非常に高い。しかし、高い再資源化率を今後も維持していくためには、新たな課題も発生している。本報では、舗装のリサイクルについて、現状と新たな課題、その対応状況、今後の展開などについて報告する。

<キーワード> アスファルト舗装、アスファルト・コンクリート塊、再生骨材、リサイクル、圧裂試験

 

 

【特集報文】 山岳トンネルの地震による変状発生メカニズム

  日下 敦・真下英人・砂金伸治・角湯克典

<抄録> 地震時における山岳トンネルの変状発生メカニズムについて、簡易な静的線形FEM解析を用いて検討を行った。その結果、代表的な覆工の被害モードと地山の地震時の変形モードの関係が明らかになった。また、背面空洞が地震時の覆工の応力に及ぼす影響が明らかになった。

<キーワード> 山岳トンネル、地震被害、数値解析、背面空洞

 

 

【特集報文】 トンネルの変状原因の推定方法

 

砂金伸治・真下英人・角湯克典

<抄録> トンネルに現れる変状の多くは、覆工コンクリートにおけるひび割れ、うき・はく離、はく落の発生であり、変状に対して対策を検討する場合は変状の状態からその原因を推定する必要がある。本報では、対象とする変状が外力の作用によって生じる場合と材料や施工に起因して生じる場合の両者の観点から、その発生原因を推定する手法に関して考察した結果を述べる。

<キーワード> トンネル、維持管理、点検、変状、ひび割れ

 

 

【現地レポート】 新仲哀トンネルの変状調査

  谷川征嗣・鍬 淳司・安田 亨・田近宏則

<抄録> 山岳トンネルの維持管理コスト縮減と長寿命化を両立させるためには、変状原因に応じた適切な対策工を適切な段階で実施することが重要である。本稿では、変状原因の究明やそのための調査および補修補強対策工の検討概要について報告する。

<キーワード> 山岳トンネル、変状原因、変状調査、補修補強、維持管理

 

 

【報文】 地表の変位からすべり線形状を推定する手法と適用事例

  石田孝司・藤澤和範・藤平 大・浅井健一・M.Constantin

<抄録> 地すべりの初期段階においては、速やかにすべり線形状や規模を把握し、効果的な応急緊急対策を行うことが、被害の拡大を防ぐ上で重要である。そこで、応急緊急対応時などに調査ボーリング等によらず、地表の変位ベクトルから地すべりのすべり線形状を推定する手法とその計算プログラムを作成した。いくつかの地すべりへの適用結果を通して、本手法の適用性を紹介する。

<キーワード> 地すべり、応急緊急対策、すべり線形状推定

 

 

【報文】 遺伝情報に基づいたニッコウイワナの交雑履歴の推定と移植

  村岡敬子・三輪準二・高橋政則

<抄録> ニッコウイワナが生息するといわれる2つの沢および放流履歴のある本川において採取したイワナのヒレを用いて、遺伝情報の解析を行った。遺伝情報データベースとの比較および滝や砂防堰堤で区切られた地点に生息するイワナ集団の遺伝構造から、各地点における交雑履歴の有無を検出し、移殖範囲の選定を行った。

<キーワード> 遺伝的かく乱、遺伝構造、移入個体、保全、砂防堰堤

 

 

【報文】 砂袋で海岸をまもる〜袋詰め工の実用化に向けた現地実験〜

 

渡邊国広・諏訪義雄・野口賢二・関口陽高

<抄録> 新たな海岸保全技術の開発として、袋詰め工による施設の試験施工を西湘海岸で実施した。試験施工に先立って波浪に対して安定な形状を模索するために水理模型実験を実施した。また、使用する素材が現地の砂礫による摩耗に試験期間終了まで耐えられることを確認するために、現地における摩耗量調査と室内における摩耗促進試験を実施した。

<キーワード> 海岸保全、袋詰め工、西湘海岸、水理模型実験、摩耗量

 

 

【土研センター】 有明海沿岸道路建設における軟弱地盤対策の取り組み〜
その3:変形抑制型の軟弱地盤対策〜

   敏信・駒延勝広・了戒公利

<抄録> 変形抑制型の軟弱地盤対策である「浅層混合処理+低改良率深層混合処理」について、盛土及びカルバートへの適用事例や、盛土と横断構造物との取り付け部の段差緩和対策への適用事例の報告を行った。「補強盛土+浅層混合処理」や「浅層混合処理+低改良率深層混合処理」の採用により、当初設計と比べて約7割のコスト縮減を行うことができた。

<キーワード> 有明海沿岸道路、軟弱地盤対策、変形抑制型、浅層混合処理、低改良率深層混合処理、非着底

 

 


平成23年5月 報文抄録
 

【報文】 情報化施工に利用する衛星測量技術「RTK-GNSS」で取得したデータの特徴

梶田洋規・北川 順・平城正隆

<抄録> 情報化施工において建設機械の位置を把握するために利用している衛星測位技術「RTK-GNSS」で取得するデータの特徴について、12時間連続取得した結果をグラフと簡単な統計処理により紹介する。

<キーワード> RTK、GNSS、GPS、情報化施工、出来形管理、施工管理

 

【報文】 長距離レーザー距離計を用いた天然ダム形状の計測

内田太郎・吉野弘祐・清水武志・石塚忠範・小竹利明

<抄録> 天然ダムが形成した場合に、天然ダムの形状を速やかに計測する手法として、長距離レーザー距離計を用いた計測手法を提案し、実証実験を行った。その結果、未経験者であっても、目標地点を正しく特定できれば、ヘリコプターからでも、水平、鉛直方向にそれぞれ20m以内、概ね5m以内の精度で計測できることが確かめられた。

<キーワード> 天然ダム、レーザー距離計、計測手法、ヘリコプター

 

 

【報文】 促進劣化試験による高分子系建設材料の寿命評価

冨山禎仁・西崎 到

<抄録> 促進劣化試験により、ポリ乳酸樹脂や熱可塑性エポキシ樹脂FRPの物理的・化学的特性の変化を系統的に調べた結果、これらの材料は環境(紫外線あるいは水)との組み合わせによって異なる劣化挙動を示し、その挙動は4つのタイプに分類できることが明らかとなった。それぞれのタイプに対し、寿命評価手法について考察した。

<キーワード> 高分子系材料、促進劣化試験、寿命、ポリ乳酸、FRP

 

 

【報文】 道路斜面の災害事例の収集・分析の取組み

浅井健一・林 浩幸・佐々木靖人

<抄録> 的確な防災のためには発生しうる災害現象を科学的に予測し戦略的に対応する必要があるが、その際に基本となるのは過去の災害の蓄積と災害原因や教訓等の分析である。本報告では、その取組みの一環として、道路斜面災害の収集・分析について報告する。

<キーワード> 道路、斜面、災害、降雨、地震

 

 

【報文】 模型実験・地震被害事例の解析による道路擁壁の耐震性の評価

中島 進・榎本忠夫・佐々木哲也

<抄録> 擁壁工指針で標準としている照査手法で設計された擁壁の耐震性を模型実験や被害事例を元に評価することを試みた。その結果、擁壁工指針にもとづき耐震設計を行った擁壁については、レベル2地震動のような大規模地震動が作用したとしても、少なくとも致命的な損傷にいたることは無く、残留変位が5%値度にとどまるという結果が得られた。

<キーワード> 道路擁壁、耐震性、模型実験、地震被害事例

 

 

【現地レポート】 桜島における土石流観測体制の現状と課題

國友 優

<抄録> 桜島においては、火山活動の活発化に伴う降灰量の増大によって、土石流の発生頻度が大きくなっているが、どの程度降灰量が増大すれば、どの程度の土石流の発生頻度が大きくなるのか、また土石流の規模がどの程度大きくなるのかは明らかでない。 このため、桜島においては、これらを明らかにするために不可欠となる降灰強度、降水強度と土石流発生頻度等を詳細に観測するため、自動降灰量計、XバンドMPレーダー雨量計等の導入による、観測体制強化を図っている。

<キーワード> 火山噴火、降灰、土石流、自動降灰量計、XバンドMPレーダー雨量計

 

 

【土研センター】 橋梁用車両防護柵のアンカー基礎に付加した補強鉄筋の効果

安藤和彦

<抄録> 歩道併設道路橋において、歩道のバリアフリー構造化に伴い地覆高不足になっている地覆端に橋梁用車両防護柵を設置する場合に、地覆強度を引き上げる方法として、アンカー基礎に鉄筋の付加する構造、付加による効果を静荷重試験により検証したので、その結果を報告する。

補強鉄筋

<キーワード> 車両用防護柵、木製防護柵、開発状況、課題



平成23年6月 報文抄録
 

【特集報文】 流水型ダムにおける空洞部の設置可能規模

岩下友也・切無沢 徹・山口嘉一・佐々木 晋

<抄録> 本論文では、流水型ダムとして重力式コンクリートダムを対象に、その堤体底部に設ける空洞規模について、空洞幅のほか、堤体形状、ブロック幅及び空洞形状の影響も考慮して、構造的な観点から解析的手法により検討し、構造上設置可能な空洞部規模について提案を行った。

<キーワード> 流水型ダム、重力式コンクリートダム、FEM解析、放流管

 

【特集報文】 既設ダムに増設する放流設備の計画・設計

箱石憲昭

<抄録> 既設ダムへの放流設備の増設においては、既設ダムの放流設備配置や周辺の地形、資材運搬路の確保、工事中のダムの機能維持のための貯水容量確保や洪水調節操作を考慮した施工計画、さらには既設放流設備をあわせた運用方法等、多様な制約条件を考慮しつつ計画・設計を進めていく必要があることを示した。

<キーワード> 増設放流設備、トンネル式洪水吐き、ダム再開発、水理設計

 

 

【特集報文】 洪水流量観測手法における新しい潮流

深見和彦

<抄録> 洪水時の河川流量観測データは河川計画・管理の基盤である。近年多くの新技術が紹介される中で、電波流速計に代表される非接触型流速計や、超音波技術を利用したADCP(超音波流速計)は、これまで浮子測法のみに頼ってきた我が国の洪水流量観測のあり方を大きく変える可能性を持つ。これらの技術の長所を生かしつつ安全確実に観測を実施するための研究開発の最新動向を報告し、将来の洪水流量計測法のあり方について提案を行う。

<キーワード> 流量観測、高水、ADCP、非接触型流速計、流速補正係数

 

 

【特集報文】 千代田実験水路を用いた越水破堤実験

島田友典・横山 洋・平井康幸・三宅 洋

<抄録> 十勝川千代田実験水路において実スケール3 次元越水破堤実験を行い、次のことが明らかとなった。越水開始から破堤拡幅終了までには5 つのStep が存在すること。越水から破堤拡幅開始までは既往の正面越流破堤実験の知見を流用することが可能であること。破堤拡幅開始以降、破堤拡幅速度は河道内の単位幅流量を用いることで推定できる可能性があると言えること。

<キーワード> 越水破堤、破堤拡幅過程、十勝川千代田実験水路

 

 

【特集報文】 戦略的維持管理の実現に向けた河道診断ツールの開発

福島雅紀・箱石憲昭

<抄録> 今日、コスト縮減が求められる中で効率的かつ効果的に維持管理を進めることが要求されている。そこで本研究では、予防保全に努めることが河川構造物のライフサイクルコストの縮減に繋がると考え、定期的な河道状態の診断を可能とするツールを開発するものである。なお、診断に追加の費用が掛かることは避けるべきであり、長期的に蓄積されてきた定期横断測量成果に着目した。報文では、その開発状況について報告する。

<キーワード> 維持管理、予防保全、定期横断測量成果、侵食対策、樹林化対策

 

 

【現地レポート】 鶴田ダム再開発の概要

安田豊生・下村慎一郎

<抄録> 本事業は、鶴田ダムの洪水期の発電容量と死水容量を洪水調節容量に振り替え、洪水期の洪水調節容量を最大7,500万㎥ から最大9,800万㎥ に増量するものです。また、最低水位の低下に伴い現在の放流施設では放流能力が不足するので、現在より低い位置に放流施設を増設するとともに減勢工を増設及び改造します。

<キーワード> ダム再開発、洪水調節容量の増量、堤体穴空け、減勢工、上流仮締切

 

 

【報文】 土砂地山トンネルにおけるロックボルトの作用効果

森本 智・真下英人・角湯克典・日下 敦

<抄録> 土砂地山トンネルにおけるロックボルトの作用効果について把握するため模型実験を実施し、天端部においては共下がり領域外側の自立した領域に達するボルト長さが必要となること、側壁部においては打設間隔についてある程度密にする必要があることなどがわかった。

<キーワード> 土砂地山トンネル、模型実験、打設範囲、ロックボルト、共下がり領域

 

 

【報文】 地理空間情報の流通による電気自動車等の普及支援

平城正隆・重高浩一・小川倫哉・横地克謙

<抄録> 情報基盤研究室では、電気自動車等の普及支援のため、充電施設の位置情報等をカーナビ等に正確かつ円滑に流通させることを目指し、充電施設に関する統一的な形式による情報集約・提供の仕組みについて研究を行っている。これまでの研究で、流通に必要となる情報項目の標準化について検討し、「EV・PHV充電施設情報流通仕様(案)」等を作成した。

<キーワード> 電気自動車、充電施設、位置情報、標準化、カーナビ

 

 

【報文】 道路設計のための3次元地形データ

青山憲明・渡邊完弥

<抄録> 本報文は、測量成果電子納品要領(案)で規定されている拡張DMに着眼して、3次元地形データの利用実態の調査を行い、道路設計業務における3次元地形データの要件を提示するとともに、要件に基づく道路設計用DMデータ作成仕様について検討した内容を紹介するものである。

<キーワード> 3次元CAD、CG、道路設計、拡張DM、データ作成仕様

 

 


平成23年7月 報文抄録
 

【報文】下水道露出配管の耐候性

橋本 翼・深谷 渉・横田敏宏

<抄録> 国土交通省が主導する下水道クイックプロジェクトにおいて提案されているクイック配管(露出配管)について、管材の耐候性を把握することを目的に実施した露出管の物性試験、紫外線・冷熱衝撃の促進試験、紫外線照射表面・断面の顕微鏡観察、分子量分析の結果を報告する。

<キーワード> 露出配管、耐候性、物性試験、促進試験、顕微鏡観察、分子量分析

 

【報文】 車載型計測装置による建設機械の排出ガス計測方法の検討

杉谷康弘・藤野健一・石松 豊

<抄録> 車載型排出ガス計測装置を使用して、実際の稼働状態における油圧ショベルの排出ガスを計測する方法について検証を行った。その結果、油圧ショベルの動きを制限することなく、排出ガスの計測が可能であることを確認したので、試験の内容や試験中に発生した問題点等について紹介する。

<キーワード> 建設機械、排出ガス、車載型排出ガス計測装置

 

 

【報文】 道路トンネル内の自然風および交通換気力の予測

森本 智・石村利明・角湯克典

<抄録> 道路トンネルの換気設備の運用において、交通換気力と自然風を考慮した制御を行うことでより効率化できる可能性がある。本稿では、供用中の道路トンネルを用いた実態調査を行い、坑口間差圧から生じる自然換気力、および交通量等による交通換気力を適切に予測し、それらを足し合わせることでトンネル内風速を予測できる可能性があることがわかった。

<キーワード> 道路トンネル、換気施設制御、実態調査、自然風、交通換気力

 

 

【報文】 河道閉塞(天然ダム)及び火山の噴火を原因とする土石流による被害範囲を速やかに推定する手法

内田太郎・山越隆雄・清水武志・吉野弘祐・木佐洋志・石塚忠範

<抄録> 本報告では、「土砂災害防止法に基づく緊急調査実施の手引き(河道閉塞による土砂災害対策編)及び同(噴火による降灰等の堆積後の降水を発生原因とする土石流対策編)に示されている調査・解析のうち、天然ダムを原因とする土石流および火山の噴火を原因とする土石流による被害のおよぶ区域の推定に関する初動期の調査・解析方法を紹介する。

<キーワード> 土石流、河道閉塞(天然ダム)、火山噴火、緊急調査

 

 

【報文】 2010年7月鹿児島県船石川土石流災害の流下実態

水野秀明・小山内信智

<抄録> 鹿児島県にある船石川では深層崩壊に起因する土石流が2007年7月と2010年7月に続いて発生した。2007年7月の土石流は流路工内で土砂や石礫を堆積しながら流れたが、2010年7月の土石流は流路工内で堆積することなく流れた。本報告では、この相違点を降水量や土砂の粒度分布などから推測した結果を報告する。

<キーワード> 船石川、シラス、土石流、粒度分布

 

 

報文首都直下地震の震災マクロ経済モデルの構築と経済復興シナリオの試算

片岡正次郎・本多弘明・高宮 進

<抄録> 巨大災害の発生がマクロ経済に与えるインパクトを定量的に評価し、円滑な財源の確保や効率的な災害復興投資のあり方を検討するため、東京湾北部地震(M7.3)が発生した場合のマクロ経済の変動をシミュレーションすることができる震災マクロ経済モデルを構築し、この地震がマクロ経済に与える影響と経済復興シナリオを試算した。

<キーワード> 首都直下地震、マクロ経済、復興投資

 

 

【報文】 河川堤防の盤膨れ・揚圧力対策に関する模型実験

増山博之・齋藤由紀子・森 啓年・佐々木哲也

<抄録> 河川堤防の川裏側に、排水機能付き遮水矢板や縦方向の砕石層(透水トレンチ)を設置し、揚圧力を解放する技術の適用性について、中型模型実験を行った。堤防高さ約1.3mの模型実験の結果、のり尻部の揚圧力は無対策と比較して排水機能付き矢板で7割以上、透水トレンチで6割以上低減した。この結果、川裏側での盤膨れ対策の有効性を実験により確認することができた。

<キーワード> 河川堤防、盤膨れ、揚圧力、浸透流、排水機能付き矢板、透水トレンチ

 

 

【現地レポート】 堺市三宝下水処理場移設改築工事
―最先端技術の導入と工程短縮―

角 羊一朗

<抄録> 堺市三宝下水処理場で施工中の阪神高速大和川線建設工事の施工に伴う下水処理施設の移転改築工事の概要および今回の施工における高度処理施設、膜分離活性汚泥法の導入、大規模ポンプ場の建設工事におけるコスト縮減と工期短縮についての取組み状況。

<キーワード> 高度処理、膜分離活性汚泥法、ニューマチックケーソン工法

 

 


平成23年8月 報文抄録
 

【特集報文】 津波による広域的浸水被害の把握

中島秀敏・渡辺信之

<抄録> 東北地方太平洋沖地震後に撮影した空中写真と衛星画像の判読を緊急に行い、津波浸水域を示す「浸水範囲概況図」を、浸水被害があったと想定される太平洋沿岸全域について作成して被災地の市町村など関係機関に配布するとともに浸水範囲の市区町村別面積を集計しホームページで公開した。また、震災後の高精度標高モデルを用いて津波到達距離と到達標高の関係を分析した。

<キーワード> 津波、浸水範囲概況図、浸水範囲面積、高精度標高データ、デジタル標高地形図

 

【特集報文】 地震・津波による橋梁等道路構造物の被害

玉越隆史・星隈順一・横井芳輝

<抄録> 東北地方太平洋沖地震により、道路橋では、津波による上部構造の流出や橋台背面土の流失など過去にあまり例のない被害が発生した。また、地震動による被害状況から、これまで進めてきた耐震補強の有効性が確認できたと考えられる事例も見られた。これら道路橋の被災状況について、特徴的な被害を取り上げ報告する。

<キーワード> 橋、地震被害、地震動、津波、液状化

 

 

【特集報文】 津波による海岸及び海岸保全施設の被害

国土交通省国土技術政策総合研究所 河川研究部 海岸研究室

<抄録> 東日本大震災の津波被害の特徴、痕跡調査結果の整理により仙台湾等の平野部と三陸地域における津波遡上特性、青森県から千葉県にかけての各県での海岸堤防の津波被害の特徴について報告する。また、土木学会津波特定テーマ委員会の報告を紹介し、海岸保全施設の復旧・復興の方向について述べる。

<キーワード> 津波、津波痕跡、海岸堤防被災、復旧・復興方針

 

 

【特集報文】 津波による堤防等河川管理施設の被害

服部 敦・福島雅紀

<抄録> 北上川、鳴瀬川、名取川、阿武隈川を対象に津波の作用による堤防などの被災状況について現地踏査を行い、その結果に津波遡上の痕跡や映像など各種データを加えて、水位(川側と堤内側)や流れの向きについて整理するとともに、それと関連づけて堤防被災の形態や程度についてとりまとめた。

<キーワード> 津波、河川遡上、堤防越水、侵食

 

 

【特集報文】 津波による下水処理場の被害

横田敏宏

<抄録> 東北地方太平洋沖地震では下水道施設も多大な被害を受けた。本報では、これまでにわかっている津波による下水道施設の被害として下水処理場の被害に焦点を当てて論じるとともに、今もなお続いている復旧作業の状況について報告する。

<キーワード> 東北地方太平洋沖地震、津波、下水処理場、被害、復旧

 

 

【特集報文】 津波による建築物の被害

国土交通省国土技術政策総合研究所 独立行政法人建築研究所 津波被害調査班

<抄録> 東北地方太平洋沖地震によって発生した大津波による建築物の被害調査を実施し、構造種別毎に被害形態を分類するとともに被害発生の要因について考察した。津波による建築物被害の全体像の把握と、建築物の被害発生メカニズム考察のための基礎資料を得るための調査についての速報を報告する。

<キーワード> 東北地方太平洋沖地震、東日本大震災、津波被害、浸水深、建築物、津波避難ビル

 

 

【報文】 地下水排除工のボーリング施工実態に関するアンケート調査(その1:施工編)

阿部大志・武士俊也・神山嬢子・藤澤和範

<抄録> 地すべりの地下水排除ボーリング工の施工、孔曲り、保孔管の実態を把握するためにアンケート調査し、回答のえられた現場技術者176名を対象に分析を行った。本稿ではアンケートの回答から施工に関して削孔延長、削孔径、削孔方向、削孔条件の変更理由、孔曲りの原因等について報告する。

<キーワード> 地すべり、地下水排除工、ボーリング、孔曲り、アンケート

 

 

【報文】 中山間地域における冬期地域防災力強化のためのコミュニケーション活性化手法

湯原麻子・芮 京禄

<抄録> 特に人口減少・高齢化の著しい豪雪地帯の中山間地域において、冬期の生活維持や安全確保のために必要な地域の能力(冬期地域防災力)の強化に向けた調査・研究の一環として実施した現地ワークショップの概要とその成果について報告する。

<キーワード> 地域防災力、豪雪、除雪、ワークショップ、自助・共助

 

 

【土研センター】 合成樹脂被覆鉄線の耐候性試験―促進時間の検討―

土橋聖賢・藤本邦三・小川久之

<抄録> 河川護岸に使用する合成樹脂被覆鉄線の耐久性を確認するために2種類の室内促進劣化試験並びに自然露光での被覆材の劣化促進速度の比較を複数の指標により行い室内促進劣化試験の妥当性を検証した。

<キーワード> 性能規定、合成樹脂被覆鉄線、促進劣化試験

 

 


平成23年9月 報文抄録
 

【報文】 岩盤の弱層せん断強度シミュレーションの開発

倉橋稔幸・吉田直人・佐々木靖人・矢島良紀・寶谷 周

<抄録> 本報告では、弱層壁面上下の凹凸面の形状から弱層のせん断強度を予測するシミュレーションソフトウエアを自然岩盤の節理に適用し、算出したせん断強度を一面せん断試験のせん断強度と比較し適用性を検証した。その結果、算出されたせん断強度は一面せん断試験とほぼ同等の値を示し、かみ合わせが悪い自然岩盤にも適用可能であることを示した。

<キーワード> 弱層、シミュレーション、せん断強度、一面せん断試験

 

【報文】 地下水排除工のボーリングの施工実態に関するアンケート調査について(その2:保孔管編)

阿部大志・武士俊也・神山嬢子・藤澤和範

<抄録> 地すべりの地下水排除ボーリング工の施工、孔曲り、保孔管の実態を把握するためにアンケート調査し、回答のえられた現場技術者176名を対象に分析を行った。本稿ではアンケートの回答から保孔管に関して使用状況、設置のトラブルと対策、保孔管に求められる機能、ストレーナの構造等について報告する。

<キーワード> 地すべり、地下水排除工、保孔管、アンケート

 

 

【報文】 山地河道における土砂移動特性に関する現地調査

箱石憲昭・福島雅紀・櫻井寿之

<抄録> ダム地点上流の山地河道における土砂移動特性を把握するため、河床礫にICタグや低周波発信機を埋設し、出水時の移動状況について調査した。その結果、今回の現地調査の条件(水深粒径比30程度、河床材料の最大粒径500mm程度)において、既存の粒径別移動限界算定式である修正Egiazaroff式の適用により、比較的精度良く移動限界粒径を算定することができることがわかった。

<キーワード> 山地河道、ICタグ、低周波発信機、移動限界粒径、現地調査

 

 

【報文】 霞ヶ浦における沈水植物移植実験―沈水植物群落再生を目指して―

大寄真弓・矢島良紀・佐貫方城・三輪準二

<抄録> 湖岸植生帯が衰退した湖沼における、沈水植物群落再生手法を確立するために、霞ヶ浦において、沈水植物の移植実験を行い、平成22年10月から23年6月までに9回のモニタリング調査を実施した。その結果、消波構造物の背後水域においては、現在の霞ヶ浦の諸条件下でも沈水植物の定着、群落化は可能であることが明らかになった。

<キーワード> 沈水植物、移植、蛇篭、消波構造物、底質粒径

 

 

【報文】 沈水植物が有する波浪低減効果

大石哲也・三輪準二・萱場祐一

<抄録> 本研究では、大型実験水路に霞ヶ浦の1/2縮尺スケールの湖岸を作成し、沈水植物の設置範囲および設置密度を変化させ、沖波波高H0=10〜30cmの波に対する波浪低減効果を検証した。実験結果より、波浪低減効果は人工藻の設置範囲と設置密度が大きく関係していた。また、沈水植物は砂移動を抑制する漂砂制御効果があり、砂浜の安定化に大きく寄与する可能性が高いことが分かった。

<キーワード> 沈水植物、霞ヶ浦、減衰効果、二次元大型実験水路

 

 

【報文】 道路橋橋脚への高強度鉄筋の適用に関する調査

玉越隆史・北村岳伸・横井芳輝・吉川 卓

<抄録> 高強度鉄筋を用いた道路橋の橋脚の耐震設計における評価手法を確立することを目的として、縮小橋脚模型を用いた交番載荷実験による検討を実施した。調査の結果、軸方向鉄筋の強度や橋脚基部に作用する軸圧縮応力度の違いにより、橋脚の破壊時の鉄筋の破断状況や耐荷力の低下傾向に違いがみられることが確認された。

<キーワード> 道路橋、RC橋脚、高強度鉄筋、耐荷力、交番載荷実験

 

 

【報文】 樋門門柱部の耐震性に関する載荷実験

中田芳貴・谷本俊輔・中島 進・佐々木哲也

<抄録> ゲートを有する水門及び樋門は、一般に、戸当たりとの取り合いや施工性等の都合から門柱の断面形状がL形であるものが多く、また、門柱及びゲート操作台から構成されるラーメン構造形式であることが多い。このような複雑な断面形状及び構造系を有する門柱について、樋門門柱部の耐力・塑性変形能及びその評価方法を明らかにすることを目的とし、樋門門柱の正負交番載荷実験を行った。水流直角方向に載荷した実験の結果、載荷方向に対して圧縮力を受け持つ断面領域が小さい領域のみに損傷が集中すること、ラーメンと構造系の終局は、柱部材のある特定の塑性ヒンジ領域の損傷により決定される場合と、各柱端部の塑性ヒンジ領域の損傷により決定される場合があることを確認した。

<キーワード> 樋門、門柱、耐震性能、正負交番載荷実験

 

 

【報文】 膨張材によるコンクリートの収縮低減

松本健一・片平 博・渡辺博志

<抄録> コンクリートの収縮ひび割れ防止対策に使用する膨張材に関して、コンクリートの配合、打設温度、養生時の水分供給の有無が膨張量に与える影響を実験により検討した。この結果、すべてのケースで膨張材の効果を確認したが、自己収縮等の影響によって膨張材の効果が必ずしも十分でないケースも確認された。

<キーワード> コンクリート、膨張材、収縮ひずみ、養生条件、自己収縮

 

 

【現地レポート】 淡輪高架橋高強度コンクリートの耐久性確保の取組

河田真一・神田隆司

<抄録> 高強度コンクリ−トは硬化後の組織が緻密であり、本来、長期耐久性に優れる材料であるが、セメント量の増加に伴い、施工性の低下、耐久性上の問題となるひび割れ発生の可能性の増大など部材に応じた課題を有する。本文は、淡輪高架橋における学識経験者による委員会を通じて行った検討結果について報告するものである。

<キーワード> 高強度コンクリート、長期耐久性、収縮ひずみ、温度ひび割れ、高流動

 

 

【土研センター】 コンクリート研究室の開設と活動

大田孝二・五島孝行・柴田辰正

<抄録> わが国では老朽化する既存インフラの維持管理が課題となっている。当センターでは、そのような問題に対応を図るべく、本年4月より新たにコンクリート研究室を開設した。当面の活動テーマは『ASRと疲労の複合劣化』とするが、その他の種々の課題への対応を通じ、コンクリート構造物の保全に努めていきたいと考えている。

<キーワード> コンクリート構造、維持管理、アルカリ骨材反応、調査・診断技術

 

 


平成23年10月 報文抄録
 

【特集報文】 ITSスポットの全国展開

金澤文彦・鈴木彰一・前田武頼

<抄録> 2011年に全国的に運用開始されたITSスポットサービスについて、情報提供や安全運転支援、インターネット接続といったサービス内容を、全国の実例を用いて紹介する。

<キーワード> ITSスポット、ダイナミックルートガイダンス、安全運転支援、情報接続サービス

 

【特集報文】 ITSスポットの情報接続サービス

金澤文彦・澤 純平・岡田浩一郎

<抄録> 2011年3月よりITSスポットを用いた情報接続サービスがスタートした。このサービスは、SA・PAや道の駅で、カーナビを通してインターネットに接続し、ドライバーが望む情報を自ら選択収集できるサービスである。本報告ではこのサービスの実施状況について報告する。

<キーワード> ITSスポット、情報接続サービス、インターネット、道の駅、SA/PA

 

 

【特集報文】 プローブデータ活用と道路交通分析の新たな展開

門間俊幸・橋本浩良・松本俊輔・水木智英・上坂克巳

<抄録> 国土交通省では、近年、民間での双方向通信型カーナビ・携帯ナビの普及及びITSスポットの全国展開等により利用可能となってきたプローブデータを活用した旅行速度データの加工・分析・保存方法の標準化を行ってきた。これら旅行速度データは、交通状況の把握、施策の立案、施策の効果把握に有効であり、これら取り組み事例を紹介する。

<キーワード> プローブデータ、道路交通調査の高度化・常時観測化

 

 

【特集報文】 実践的ITS特別研究委員会の取組み

松本修一・池田朋広・田中伸治・家田 仁

<抄録> 土木学会実践的ITS研究委員会では、産官学の叡智を結集し、これからのITSの技術開発、実社会への普及、国際展開などに向け関係団体とタイアップを行いながら先導的な役割を担い、より良い社会の実現に向け活動を行う予定である。本稿では、実践的ITS研究委員会の取組みを紹介する。

<キーワード> ITS、土木学会、情報提供、実践的ITS

 

 

【特集報文】 動線データを活用したバス走行改善支援及び道路整備効果の検証

濱田俊一・今井龍一・井星雄貴

<抄録> 本稿は、2種類の動線データを用いたバス走行改善支援および道路事業の効果把握の有効性を報告した。動線データを用いることにより、バスの定時性の向上など従来の効果計測では把握しにくい効果の発現まで明らかにすることができた。また、複数の動線データを用いることで、バスと一般車両の両方で効果の発現を確認できた。

<キーワード> 動線データ、バスICカード、プローブ、交通行動

 

 

【特集報文】 ITSにおける道路基盤地図情報の活用

須田義大・池内克史・中野公彦・牧野浩志・田中伸治・平沢隆之・小野晋太郎・洪 性俊

<抄録> 本稿では、近年整備が進んでいる道路基盤地図情報の新たな活用案として、ITSへの適用について検討した結果を紹介する。具体的には、道路基盤地図情報を利用したドライビングシミュレーション実験シナリオの作成について検討した内容を記述し、さらに同情報を利用したシミュレーション手法、交通シミュレーション等について紹介する。

<キーワード> 道路基盤地図情報、ITS、ドライビングシミュレータ、動的交通運用

 

 

【報文】 シールドトンネルの施工時荷重の影響に関する一考察

石村利明・森本 智・角湯克典・真下英人

<抄録> 本報文は、シールドトンネル掘進に伴う施工時荷重がセグメントに与える影響を把握するため、硬質粘性土(土丹)中に施工されたトンネルの現場計測結果による分析を行うとともに、多リングはり−ばねモデルを用いた骨組み構造解析を行い、施工時荷重がセグメント覆工に与える断面力について検討を行った。

<キーワード> シールドトンネル、施工時荷重、現場計測、多リングはり−ばねモデル

 

 

【土研センター】 米国における道路施設の緩衝対策とその性能

安藤和彦

<抄録> 路側に設置されている信号機、標識柱、照明柱等の柱状構造物や橋脚、分岐部等は、車両が衝突する危険性が高く、米国ではこれら構造物の衝撃緩和対策に先進的に取り組んでいる。ここでは、米国で行われている対策で我が国では事例の少ないものについて、その内容やそれら対策の性能評価について紹介する。

米国における道路施設の緩衝対策

<キーワード> 道路施設、緩衝対策、性能評価、衝突試験

 

 


平成23年11月 報文抄録
 

【報文】 イタセンパラを育む木曽川氾濫原生態系の理解と再生への取り組み

佐川志朗・萱場祐一・久米 学・森 誠一

<抄録> イタセンパラを育む木曽川の氾濫原環境は劣化の一途をたどってきた。現在自然再生事業の中で彼らの生息場所復元を順応的に行うとともに、保護協議会による地域協働や、遺伝的保全(域外保全)等の複合的な対策を行っている。今後は外来種の挙動にも注視して再生事業を推進する必要がある。

<キーワード> タナゴ、自然再生事業、二枚貝、氾濫原、ワンド

 

【報文】 東アジア圏の空間構造のマップ分析

芮 京禄

<抄録> 東アジア地域が、ヨーロッパや北米に並ぶ世界の第3極として安定して発展するためには、域内の国・地域がバランス良く持続的に発展する必要があり、将来はそのための発展ビジョンが必要になる。本稿では、このビジョンづくりに欠かせない空間計画分野における公共セクター間の共同作業として、東アジア空間構造分析が可能と考える。よって、日中韓の統計データと地図データを用いて東アジア空間情報インフラ共有の可能性、その結果を活用した空間構造マップ分析の有効性について先行的に考えてみた。

<キーワード> 東アジア、日中韓、空間情報インフラ、空間構造マップ分析

 

 

【報文】 東アジア越境地域政策の現状

芮 京禄

<抄録> 近年、東アジア地域では経済的な相互依存関係が深まり、東アジア共同体・連携という地域協力の構想が議論されるようになっている。東アジア地域全体の持続的な発展のためには、依存する双方の安定と緊張の緩和、相乗関係の構築が必要不可欠であり、そのためには国家および地域間の協力・連携が必要かつ重要であるという視点が拡大しつつある。本研究では、東アジア地域のなかでも経済規模面での存在感が大きい反面、安定した協力構想が存在しない日中韓3ヶ国を対象に、各国の国土空間計画(全国計画と広域地方計画)のなかから国境を越える政策課題、具体計画を抽出することで、東アジアの越境地域政策の現状を把握する。

<キーワード> 東アジア、日中韓、越境政策、地域政策、国土計画

 

 

【報文】 山地河道における河床材料調査法

箱石憲昭・福島雅紀・櫻井寿之

<抄録> 河床材料調査法の分類と特徴を紹介し、特に粒径の大きな礫が存在する山地河道において留意すべき点をまとめた。現地河川における容積サンプリング法と線格子法の調査結果の比較を試み、巨礫もしくは大礫を含む河道における調査の作業効率を考えた場合、最も効率的な調査手法として線格子法が推奨されることを示した。

<キーワード> 山地河道、河床材料調査、容積サンプリング法、線格子法

 

 

【報文】 河川堤防の浸透による崩壊形態と安全性評価

齋藤由紀子・佐々木哲也・森 啓年

<抄録> 洪水時の浸透崩壊が懸念される河川堤防の弱点箇所を、効率的・効果的に今後強化していくため、現行の浸透安全性評価手法の精度向上を目的に模型実験による検討を実施した。崩壊時のすべり面で発揮される土質定数について考察した結果、崩壊時における排水条件を考慮の上、適切な土質定数を設定することにより、対策設計の合理化がはかれる可能性を示した。

<キーワード> 河川堤防、浸透安全性、すべり、土質定数、模型実験

 

 

【報文】 微生物代謝を利用した砂の液状化対策効果

稲垣由紀子・塚本将康・森 啓年・中島 進・佐々木哲也

<抄録> 微生物代謝を利用し、炭酸カルシウム法により砂を固化させた場合について、三軸圧縮試験(CD試験)の結果から、強度向上が期待できることを確認した。これと同程度の量の炭酸カルシウム法を析出させて豊浦砂を固化した模型地盤を作製し、動的遠心模型実験を行い、液状化対策としての効果を確認した。

<キーワード> 地盤改良技術、微生物、動的遠心模型実験、液状化対策

 

 

【報文】 道路整備による救急医療改善効果の推計

藤本 昭・並河良治

<抄録> 道路を整備する場合には一般的に走行時間短縮と走行経費削減、交通事故減少の3便益および建設維持費を使って費用便益分析を行っている。この3便益以外にも存在する整備効果のうち救急医療改善効果(救命患者数)を推計する方法を明らかにするものである。

<キーワード> 道路整備、搬送時間短縮、救急患者生存率、救急医療改善効果、救命患者数、高齢化率

 

 

【現地レポート】 霧島山(新燃岳)噴火とその後の対応

杉山光徳・井上英雄・大脇鉄也

<抄録> 霧島山(新燃岳)の火山噴火に伴い宮崎河川国道事務所として行った、自治体支援活動と道路管理者としての対応及び、火山砂防としての緊急的な諸調査・減災を目的としたハード対策及びソフト対策等の報告。

<キーワード> 噴火に伴う道路の降灰対応、噴火に伴う砂防の緊急調査、噴火に伴う砂防の緊急工事

 

 

【土研センター】 津波越流による堤防背後における大溝の形成と堤防裏のりの吸出し破壊

宇多高明・酒井和也・三波俊郎

<抄録> 2011年3月11日の大津波により、仙台湾沿岸では堤防の陸側に幅約30mの溝が形成されるとともに多くの地点で破堤が起きた。また、破堤を免れた堤防の表のり面はほぼ原形を保ったのに対し、裏のりでは崩壊が進む現象が各所で観察された。ここでは宮城県山元海岸での2011年8月12日の踏査結果を基に考察する。

<キーワード> 大津波、堤防、洗掘穴、溝、越流、山元海岸

 

 


平成23年12月 報文抄録
 

【特集報文】 交通調査のプラットフォームの導入 〜交通調査基本区間と基本交差点〜

松本俊輔・橋本浩良・水木智英・門間俊幸・上坂克巳

<抄録> 全国の幹線道路における調査は、区間に統一性がない場合や、年次の異なるデータ間で区間の定義が異なることが多い。これらの課題を解消すべく、国総研では、交通調査のプラットフォームとしての「交通調査基本区間標準」を開発した。さらに基本区間データから生成される基本交差点データによりネットワークレベルでの解析も可能になった。これらの概要を紹介する。

<キーワード> 交通調査・分析、交通データのプラットフォーム、調査区間の設定、道路の位置参照

 

【特集報文】 365日24時間の交通量調査を支えるデータ解析技術

橋本浩良・水木智英・松本俊輔・門間俊幸・上坂克巳

<抄録> 国土交通省が行う交通量調査は、5年に1度の道路交通センサスから、365日24時間の常時観測へと移行された。本稿では、交通量常時観測を可能とした国総研の取組として、交通量常時観測機器から得られる交通量データの特異値・欠測値の処理方法及びそのデータを用いた広域的な交通量の推定方法について紹介する。

<キーワード> 交通調査、交通量の常時モニタリング、車両感知器、特異値の判別、欠測値の補完

 

 

【特集報文】 道路構造物群のマネジメント(管理)における点検データの活用
〜定期点検結果の分析から見た損傷発生・進行の特徴及び現有性能の指標化〜

玉越隆史・大久保雅憲

<抄録> 予防保全的管理の実現に向け、橋梁定期点検結果を分析して得られた損傷発生・進行の特徴に基づく管理の留意事項を述べるとともに、路線管理の実現に向け、道路構造物の点検結果を活用した道路構造物群の現有性能評価指標による道路ネットワーク性能の可視化を試みた。

<キーワード> 道路構造物、維持管理、予防保全、点検、道路ネットワーク

 

 

【特集報文】 効果的な交通安全事業マネジメントへ向けた事故対策データベースの利用

尾崎悠太・高宮 進

<抄録> 各箇所におけるPDCAサイクルによるマネジメントのサポート、交通安全対策の経験の蓄積・共有を目的として構築した事故対策データベースの機能を紹介する。また、事故対策データベースに蓄積されたデータを用いた分析例として、幹線道路における交通安全事業全体の効果分析や、各対策工種の対象とした事故類型への効果等分析を紹介する。

<キーワード> 事故対策データベース、交通安全事業、マネジメント、交通事故対策効果

 

 

【特集報文】 道路の整備・管理における低炭素化 ―データベースを用いた対策の検討―

曽根真理・神田太朗

<抄録> 国土技術政策総合研究所は、計画、設計、施工等の各事業段階に対応した階層構造にデータベース化された、CO2排出原単位を開発した。このCO2排出原単位を用いることで、省資源化や耐久性の向上等の技術的要件と両立した低炭素化技術の掘り起しや、工事全体のCO2排出量の効果的な削減対策の検討が可能であることが確認された。

<キーワード> 低炭素化、CO2排出原単位、LCA、LCCO2、積算体系

 

 

【特集報文】 トータルステーションを用いた出来形管理の適用場面拡大に向けた取り組み

北川 順・梶田洋規・重高浩一

<抄録> 直轄工事への導入・普及に取り組んでいる情報化施工技術の1つに「トータルステーションを用いた出来形管理」(以下、「TS出来形管理」)があるが、この技術は、現状では「土工」のみを対象とした技術である。本稿では、国総研におけるTS出来形管理の舗装工や、地下埋設物工等への工種拡大と、出来形計測データの道路管理への利活用に向けた検討について紹介する。

<キーワード> 情報化施工、CALS/EC、出来形管理、トータルステーション

 

 

【現地レポート】 民間プローブデータを用いた交通円滑化マネジメント

北澗弘康・奥山敏幸

<抄録> 交通円滑化マネジメントでは、時々刻々と変化する経済情勢や社会基盤整備状況等により変化する旅行速度の最新情勢をモニタリングすることが求められている。本稿では、交通円滑化マネジメントへの活用が進みつつある民間プローブデータについて、その特徴と現場での活用可能性(事例)について紹介する。

<キーワード> 交通円滑化マネジメント、民間プローブ、交通指標、活用可能性検討

 

 

【報文】 高流速および高濃度濁水が付着藻類におよぼす影響
−流速及びSS濃度の変化と付着藻類の変化に着目して−

森 照貴・萱場祐一

<抄録> 本研究では、ダムの恒久的堆砂対策実施時に排出される高濃度濁水が底生性付着藻類に及ぼす影響を実験的に検討した。実験の結果、高流速下(4m/s)は低流速下(0.5m/s)と比較して無機物量の堆積量が少なく、また、浮遊者濃度が大きい程付着藻類の現存量の減少率が小さいことが明らかになった。

<キーワード> 恒久的堆砂対策、ダム、付着藻類、濁水、洪水

 

 

【報文】 既存地すべり地形の地震時地すべり発生危険度評価手法

丸山清輝・ハスバートル・中村 明・野呂智之

<抄録> 既存地すべり地形の地震時地すべり発生危険度評価手法について検討した。その結果、地震(M7.0前後)による逆断層周辺の地すべり発生危険度評価範囲と、危険度評価手法として危険度評価要因に地すべり斜面の標高偏差と縁辺侵食率を用いたロジスティック回帰分析による方法を提案することができた。

<キーワード> 地震、地すべり発生危険度評価手法、地すべり多発範囲、ロジスティック回帰分析

 

 

【土研センター】 生物多様性に配慮した法面緑化手法の追跡調査報告
−自然侵入促進型植生マットによる全国65件の施工事例−

堀内晴生・石田和宏

<抄録> 周辺植物の自然侵入で緑化を行うために開発した自然侵入促進型植生マット(建技審証第1008号)を施工した全国65現場について、周辺植物の侵入状況を主体とした追跡調査を実施した。その結果、同マットで施工した現場は、法面の安全性を維持した状態で、概ね施工後2〜3年を目安に周辺植物で緑化されることが確認された。

<キーワード> 法面緑化、自然侵入促進工、植生マット、生物多様性、自生種、侵食防止